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TOSHIN GOLF TOURNAMENT IN Central 2013

藤本佳則がツアー通算2勝目【インタビュー動画】

涙のツアー初優勝から1年半。でも「2回目も泣いたら、気持ち悪いでしょ。何回泣くねんて、言われるでしょ」。2回目は最後まで、貫いたビリケンさんスマイル。
勝ちたくて、勝ちたくて、ガツガツしているときほどチャンスは来なくて。「最後もパーでいい」と欲張らずに、無心で目の前の1打と向き合ったときに限ってひょっこりと、バーディが来たりする。4打差をつけて迎えた18番は、ティショットも安全にUIで打ったし、2打目も9番アイアンでもう一度刻んだし、奥から下りの5㍍のフックラインも、入れるつもりなんかなかった。

「17番もそう。ムリくりゲームを動かすこともなく、静かに、自然に任せてやっていたのに」。そういう時に限って、1.5㍍のチャンスについたりする。いつもなら、チャンスとあらば「スタートから鼻息荒く」。欲求に任せてボギーを打って、自滅するのがオチなのに、「勝つときって、パットもこんなふうに入るんやなって。それも新たな発見でした」。
新境地の中で勝ち取った2勝目だ。

大会主催の株式会社トーシンの石田信文社長の今年の目標は「7アンダーの予選カットに、優勝スコアは30アンダー」。「そらムリですわ・・・」と表彰式で社長のスピーチを聞きながら、苦笑いで小さく突っ込んだが、2位に4打差をつける通算24アンダーの圧勝は、今季初戦のタイランド選手権に並ぶ大量アンダーに、主催者の意図にも少しは報いることが出来た。

タイランド選手権では、日本勢の最高位が谷原秀人の10位タイという結果に、藤本も含めて多くの選手たちが、「僕たちは、獲ってこいというセッティングに慣れていない。どこか自分にブレーキをかけてしまう」と感じたものだが、免疫を作るためにも日本ツアーにもそんな大会があってもいいと、主催者とJGTOの意見が一致して実現した今週のバーディ合戦は、最後まで自然体のままで頂上に立つことができた。

最終日は兄貴分の小田孔明との一騎打ちの様相にも「途中は1打差まで来られたりして。後半はどう転んでもおかしくない展開に、苦しい場面もあったんですけど」。シビアな局面も「あ、俺なんか、球が飛んできたな、とか」。体から勝手にあふれ出すアドレナリンも、量の変化を冷静に分析したり、自分と向き合い上手くコントロールをして「今回は最後まで、平常心で出来たと思う」。涙の初優勝から1年半をかけて、ひとつ成長した自分を実感できたことも2勝目の大きな収穫だった。

今年は夏を過ぎて、「あとはパットさえ入れば、いつ勝ってもおかしくない状態でした」。阿河(あが)徹コーチと、約1月半の夏休みにスイングを見直したことで、安定感が格段に増した。今季は序盤に、持ち球のフェードを極めようとしたは良かったのだが、少し方向性を誤った。
「右手を返して打つと、つかまり過ぎて左に行くことがある」。それを嫌って、かえって迷路にはまり込んでいたのを「右手を使ってヘッドを走らせるように打たないと、距離も出ない」と阿河さんに修正されたことで、かえってショットのバリエーションが増えた。
「結果、ストレートや時にはドローボールも打てるようになり、左に行くミスも嫌でなくなった」。攻め方の幅も広がった。

また夏以降は日替わりでパターを変えるなど、「ロッカーはパターだらけよ!」。そんなグリーン上の試行錯誤も今週は、ひとまずおさまり「4日間で、一度も替えなかったのはめっちゃ久しぶり」と、今週はネオマレット1本で通して、2勝目を引き寄せれば「今までの練習は、間違ってへんかった。努力してきたことは、間違ってへんかった。優勝したことで、正しかったという自信がつく」。これから秋以降の戦いにも弾みがつく1勝だ。

「体がスイーツで出来ている」というほどの甘党は、しかしプロになって体のキレが鈍ることを嫌って、控えるようにしてきたが、飯田光輝トレーナーには「体重があったほうが、有利やで」。そう言われて、「今は好きなものを好きなだけ」。おかげで、体重は2キロ増。その分、毎日トレーニングでカロリーを消費しているから「タダのデブとは違うのよ」。逞しさもいっそう増した、プロ2年目だ。

応援に駆けつけてくれたお祖父ちゃんとお祖母ちゃん。息子との記念撮影にも「私はいいわ」と尻込みするお母ちゃん。「今日、撮っとかんと今度、いつ勝てるか分からんよ!」と、まるでその気のないセリフで、かたわらに呼び寄せた息子。でも、本音はもっと別にある。
昨年は、デビューからわずか5試合目の「日本ゴルフツアー選手権 Citibank Cup Shishido Hills」で、メジャー制覇のツアー初V。そのあと余裕をかましたつもりはないのだが、「長いよ・・・。だいぶ長いよ!」と、我ながら2勝目までが空きすぎた。
「1勝して余裕を持つんじゃなく2勝、3勝としていかなければ、日本を背負って立つ選手にはなれない」と23歳の自覚も満タンに、今年はこれで一息つくつもりはさらさらない。
次週は、日本一決定戦。誰もが目の色を変える日本オープン。「でも僕には、どの試合も意味がある。どの試合がというより、どの試合でも勝ちたいので」。今度こそこの勢いに任せてがむしゃらに、プレースタイルは平常心でも、心はいつも、頂点だけを目指して歩くつもりだ。


  • 社長のスピーチに、思わず小さくツッコミを・・・
  • 「大会が成功したのは、ボランティアのみなさんが朝早くから毎日頑張って下さったからだと思います!」(藤本)
  • 応援に駆けつけてくれたお婆ちゃん、お爺ちゃん、そしてお母さんと(左から)

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