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とおとうみ浜松オープン 2012

藤本佳則がトップタイに

ルーキーが、この3週間の鬱憤を晴らした。今季デビューの藤本が、初日から64の大爆発だ。危なかったといえば、16番でグリーンの奥に落としたくらい。それもきっちり寄せて楽々とパーを拾ってボギーなし。

「グリーンの読みは、キャディさんに言われるがまま」。今季から、タッグを組む専属キャディの前村直昭さんとのコンビネーションも抜群に、「今日はよう入りました」と、大満足の6バーディの最後はチップインだ。18番のパー5で、左のバンカーから寄せに行ったアプローチを直接入れた。みごとなイーグル締めに、首位タイに躍り出た。

ツアーのデビュー戦となった開幕戦で7位。ツアーでの初賞金429万円で、母の日には「日焼けせーへん帽子みたいなんを買ってあげた」と、さっそくささやかな親孝行も済ませて一気に上昇気流に乗りたいところだった。

しかし3戦目は出番さえなかった。予選会のQTランクは4位でも、中日クラウンズは敷居が高い。現地ウェイティング制度を利用して、ぎりぎりまで欠場者が出るのを待ったが、戦わずして奈良の自宅に帰るしかなかった。
翌週は1週間のオープンウィークを挟んで先週の日本プロも、普段のトーナメントとカテゴリーが違って、出場権がなかった。

ぽっかりあいた3週間は、悔し紛れにせめて「試合に出ていたら、やれないことをやろう」と、毎日隣県の京都に通った。元競輪選手が開くジムは、初動負荷のトレーニングがメインだ。
「トレーニングのような、ストレッチのような。おかげで体がよく動くようになった。すすめられて行ってみたんですけど、やってよかった」と、初めての取り組みを無駄にはしない好発進だ。

2人兄弟の弟は、練習場を経営していた祖父の影響で7歳からゴルフを始めた。「小さいころからやんちゃで。おかんには、よく“やいやい”言われた」と、あの頃のままのびのびと成長した。
名門・東北福祉大のころから注目のトップアマは、プロの舞台に立っても変わらない。
「プロでもやれて当たり前と思われてる方もおられるでしょうし、自分でもそういう選手でありたい」と、試合に出れば周囲の期待を裏切らない活躍を目指している。

身長165センチと小柄だがその分、鍛え上げられた分厚い胸板には意思の強さと、鼻っ柱の強さを漂わせる。どこに出ても堂々として、もはやベテランプロの風格さえある。
「いえいえ、緊張していますよ、これでも。朝の1番ティとか」と藤本。「むしろ、緊張しないとダメだと思っているんで。緊張しないといいプレーなんて、できっこないと思うんで」。
強さと繊細さのバランスが絶妙な22歳に、注目だ。

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