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ゴルフ日本シリーズJTカップ 2025
単独トップ浮上の小木曽喬は日本タイトルでの“国内初V”で見たい景色がある
昨年より、1週遅れの最終戦が、影響しているのか。東京よみうりのグリーンは、例年になく速く、硬く、精鋭たちのショットを容赦なく跳ね返す。
加えてこの日、コース地元の稲城市の早朝の気温は-1℃。今年一番の冷え込みが、難条件に拍車をかけた。
宋永漢(ソン・ヨンハン)が7アンダーの「63」で首位に立った初日から一転、この日アンダーパーを記録したのは、わずかに7人。
2打差の2位から出た小木曽喬(おぎそ・たかし)も苦しんだ。
前半の6番で、3メートルを決め、7番で1メートルを逃さず、連続バーディを先行させたのはよかったが、すぐ8番に続いて10番でもボギーを叩くと、後半13番ではダブルボギーを叩いた。
右エッジからのアプローチが4メートル行き過ぎた。そこから50センチに寄せたのに、返しを外して3パットを喫した。
でも「グリーンの傾斜が強いので。3パット1回くらいは許さないと」と、自分を大目に見られたのと「他の選手も伸ばしていない。みんな苦しんでいる」。
冷静に現状を把握し、自身を見失うことなく次の14番ではフェアウェイから100ヤードを残して、2メートル半のチャンスを決めきることができた。
「ダボがきてからの展開がよかったのがきょうは一番。そこから下がりそうだったけど、しっかりフェアウェイに打ち切れた」と、まず一歩バウンスバック。
さらに16番では、10メートルのバーディパットを決めると、次の17番パー5で今度は197ヤードから6アイアンで7メートルに乗せた下りフックのイーグルトライもねじ込み、単独首位獲りに成功。
1差の通算7アンダーまで伸ばして今季最後のVチャンスに希望をつないだ。
福井工業大付属福井高校3年時の2014年「日本アマ」で日本人選手としては最年少の17歳Vを達成し、翌年の同大学1年時にプロ入りを果たした。
23年には初シードと共に、本大会の初出場も決め、翌年24年には「ハナ銀行インビテーショナル」で初Vを達成。
2年目の昨年は勝者としてエントリーリストに名前を載せたが、現在賞金21位で、3年連続3回目の出場を果たした今年は、未勝利だ。
「トップ10が6回、そのうちトップ5が4回…」。
さらにそのうち2回は、「パナソニックオープン」と「ACNチャンピオンシップゴルフ」で惜敗の2位。
「最終的には自分が伸ばし切れずに勝てなかったのがほとんど。その中で、こういう順位でプレーできているというのは、自分のレベルが上がっていると感じる」。
自己評価をしながら「もちろん優勝したい気持ちは強い」と、今季最終戦で2勝目を獲りに来た。
初日のスタート前に、みんなでお揃いのベンチコートを着て全員参加の開会式を待つ間に、浅地洋佑(あさぢ・ようすけ)らと雑談したのが心に残っている。
「俺1勝」「俺も1勝」「おまえ何勝?」。
「今年は勝ってないけれど…」と、小木曽は答えるしかなかった。
昨季1勝の共催試合が、韓国開催だったこともあり、ホームでの2勝が早く欲しいのはもちろんだ。
「それがここなら最高」と、3年シードの本・日本タイトル戦ならいうことはない。
今までは「移動が大変だし、言葉も通じない。海外志向はまったくない」と、決め込んでいた。
でも、一緒に練習している浅地洋佑(あさぢ・ようすけ)が来季LIVゴルフの出場資格を獲り、同じ名古屋の金子駆大(かねこ・こうた)は賞金1位の資格で次週、PGAツアーの最終予選会に挑戦する。
「PGAツアーは無理かもしれないけれど。ヨーロッパやアジアとか。僕もそこに挑戦できるように」と、気持ちの変化が生まれている。
「出場権が手に入れられれば、また自分も変われるかもしれない」。
頂上決戦の頂点に立てれば、今まで見たことない風景が見られると、小木曽は考えている。















