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髙橋勝成が今年も熱血講義!(JGTO強化セミナー)

本物のレジェンドは、本音でぶつかる。昔の失敗、かっこ悪い時代の自分、弱かった自分もさらけだす。
後に続く若者たちにも、真に強いプロゴルファーになって欲しいからだ。
ツアー通算10勝。シニアツアーは2000年から4年連続の賞金王は、包み隠さず話した。

「僕の悪いところは嘘つきです」と、髙橋勝成。ゴルフ界きっての人格者で知られるレジェンドの、いきなりのカミングアウトにぎょっと目を剥いたのは、ツアー通算16勝の鈴木規夫。この宮崎合宿を主催するJGTOの理事で、オリンピックゴルフ競技対策本部強化委員会委員も一瞬、困ったように「それは・・・いかんなあ」。
はてさて、この日の講義はいったいどうなってしまうのか。

今年4回目を迎えたJGTO主催の強化合宿「JGTOゴルフ強化セミナーin宮崎フェニックス・シーガイア・リゾート」では昨年から、ゴルフ界のレジェンドに講義を依頼。1回5日間につき、計3回に分けて行われ、今年は1月に行われた初回は、尾崎直道に続いて2月8日から始まった今年の第2回目に“教鞭”をとったのが髙橋だ。

「僕はごまかしもやります。コースに出てごまかすんです」と、なにやらますます雲行き怪しく、完全にその意図を取り違えた鈴木はますますモゴモゴと、この講義の持っていきようを探っていた。

そんな“進行役”の戸惑いをも、まったく意に介さず髙橋は、若かりし自分の失敗を語り始めた。1975年にプロ転向するなり翌年にアジアサーキットの韓国オープンで初優勝を飾り、「勝つなんて簡単だ、と」。しかしその後、ぱたりと勝てなくなって、「あれは思い上がりだったと気がついた」。

何度もそのチャンスがありながら、掴みきれずにいた丸8年。「あの頃の髙橋プロは、アプローチがひどかったね」と同じ時代にしのぎを削った同世代の戦友だからこそ、遠慮のない鈴木の述懐。「はい、ひどかったですね」と屈託ない笑顔で認める素直さで、本人も当時の自分を振り返った。

髙橋が「自分は嘘つき」と言ったのは、そんな時代の頃を言っている。「強くなるために大事なことは、自分の良いところと悪いところを見極めること」。今ならそう確信を持って言えるが若いころは無用なプライドもあれば、若気の至りもあり、すぐにその域に到達できないからこそ、それが若さというものかもしれない。

弱点を認めず、優勝争いのプレッシャーもあってないような顔をしていた。それが髙橋の言うごまかしであり、自分へのウソである。自分から目をそらし、逃げていた。
「でも、逃げても逃げ切れるもんじゃなかった。向き合わなければと、ある日気づいた」。アプローチの鍛錬にも人一倍時間をかけるようになり、心理学の先生の力も借りた。がむしゃらに学び、練習を重ねるうちに光が見えてきた。

「練習したものを、そのまんまコースにぶつければいいんだ、と。ぶつけてもダメだったら、また一からやりなおせばいいんだ、と。一番良くないのが、今の自分でいいんだと思うこと。勝ったり、調子が良くなってくれば人は今の自分を守ろうとするものですが、そんなの守りきれるもんじゃない。変わっていくんです。勝ったからこそ、変化をおそれずまた作り直すんです。また一からやるんです」。83年の初シード入りから、15年連続のシード権もその繰り返しの中で築かれた。自分の恥をしのんでも、若者たちにその現実を伝えたかった。

そしてこれはプロ41年目の65歳が、自身のデビュー時から気になっていることだがトーナメント会場で、プレー中の物音に目くじらを立てる選手たちのことだ。確かに、ゴルフには他人のショット時には静かにするというマナーはあるが、髙橋の時代は、なんと同組の選手の吐く息の音にさえ過敏に、パット時にグリーン上の人払いをした選手がいたとか、いなかったとか。
「ああ、いたねぇそういう人も」と、髙橋の講義に耳を傾けていた鈴木も、思わず苦笑いが浮かんだほど。
たとえマナーであっても、それが常に守られる、とは限らない。「物音ひとつしない静かなところで打つというのが、当たり前のプロになってはいけない」と髙橋は訴えた。
「やれ携帯電話の音がした、話し声がした、ギャラリーの方が動いたと、そのたびにその方向を睨んだり、びくびくしたり。それは、自分の失敗の責任を人に着せたいからにほかならない。棚に上げてるんです。失敗の原因を、他のところに探してるんです。みなさんにはそんな弱い選手になって欲しくない」。

またそれは、ゴルフ人気低迷の一因につながる危険がある、「身動き出来ない、息も出来ない。そんなイベントなんて、誰が見たいと思うんですか。どうしても気になるのなら、笑って、アドレスを解いて、もう一度、やり直せばいい。ユーモアで対処できる選手になって欲しい」。
日頃からそれを想定した鍛錬を積むことも大切だ。プレッシャーに打ち克つために、練習ラウンドではティーグラウンドの周りを5周走って、心拍数を上げた状態で打って、次の打点までまた走って、ドキドキしながらグリーンを狙うというのを繰り返したという。

それと同じ要領で「普段からわざとガチャガチャしたところで打つとか、自分で歌いながら打ってみるとか」。その心がけが、大事な場面で誰より自分自身を救うことになるかもしれないから。「試合では、お客さんのせいで失敗したと、怒ったところでもう一度、打てるわけではないのですから。常に静かなところで打てる保証もないわけですから。それを責めるより、わざとそういう環境を作って練習してみたほうが、よほど格好いい」と、合宿の参加者たちに訴えた。

日大出身の髙橋。今は主流となった学士プロのはしりは、「今でも僕は、学生みたいにセルフバッグを担いで、走ってラウンドします。何も整っていない状況でラウンドすることは、良い練習になる。学生時代に覚えたことは、今でも宝ですね」。
同じ大学の大、大先輩の講義には、いままさに売り出し中の後輩も、参加者の中から思わず声を上げた。
「勉強になります!」とは、今季初シードの堀川未来夢(ほりかわみくむ)だ。
悪習ではなく良い習慣、伝統がレジェンドから引き継がれていくことを、髙橋も願うばかりだ。

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