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VanaH杯KBCオーガスタゴルフトーナメント 2010

谷原秀人が2年ぶりのツアー通算9勝目

1番からの連続バーディで勝ちを確信した、という絶対的な自信は、確かにデビュー当時のころの谷原だ
正確に数えれば、“1年11ヶ月と1日”をかけて、ようやく勝ち方を思い出した。「今日は最後まで、ピンだけを見てプレーした」。今をときめく石川遼や、池田勇太のように。
「あいつらは、何も考えないで、怖いモノなしで攻めていく」。それは、20代のころの自分の姿でもある。

「昔の俺もそうだった」。全英オープンで5位に入った2006年と2008年には獲得賞金1億円超え。毎年、賞金レースの常連は、怖いものなど何もなかった。

しかしそれからたった2年の歳月が、谷原から勢いを奪った。以前は自分より年下の選手などほとんどおらず、自ら先輩プロに挨拶してまわるばかりだったのが、いつの間にか「中堅」と呼ばれ、挨拶されることのほうが多くなり、それと比例して年々破竹の勢いで、ツアーはレベルを上げていった。

たとえば、今週の予選カットラインでもそうだ。
「4アンダーなんて、以前なら考えられない。僕の中では想定外。毎週、1打2打は、僕のイメージよりレベルが高い」。

その中で、いつの間にか安全策ばかりを取るようになった自分がいた。「左にピンが切ってあったら、右3メートルでいいや、とか」。気持ちがピンから遠ざかるほどに、勝ち星は遠のいた。
本人曰く「大人になった」とは聞こえはいいが、歳を経て糧となるはずの数々の経験が、逆に怖さとなって足かせになることも。

昨年は1勝も出来ず、賞金ランクは29位と落ち込んで、「もう勝てないんじゃないか・・・」と不安にかられる日もあった。
「そのまま攻める気持ちを忘れてしまう選手もいると思う。でも、そういうことを、僕は遼や勇太のゴルフから感じ取ることが出来た。思い出した僕は凄い」と、1打差の2位タイで迎えたこの日の最終日こそ本来の持ち味を発揮して、スタートからノリノリだった。

1番からの連続バーディでほくそ笑む。朝、新聞で石川のコメントを読んだ。
「明日は6番までに、1つか2つ伸ばして早い段階で追いつきたい」。
たちまち単独首位に躍り出て、「俺、もうそれが出来てんじゃん」と、ますますその気になった。

同じ最終組でスタートした上井は1番でいきなりOBを打った。その様子をじっと見ていた。「上井は体が完全に止まってた。手打ちになっていた」。だが無理もない。「まあ、緊張するわな。彼は初優勝だもん」。

大混戦の中にあっても敵を子細に観察する冷静さと、ひたすらピンだけを見て攻め続ける情熱と集中力と。確かに、デビュー当時から谷原は、そのバランス感覚が絶妙だった。
「今日は、同じ組のチョイさんだけ見ていればいい」と、前日にも増して「お気楽」に、やっぱりこの日ものほほんと、ツアーで唯一の難解な高麗グリーンは相変わらずラインも読まずにチャンスを沈め、「このままいけば、勝てるかな」と、早々に出した目算が、崩れかけたのは初日のスタートホール以来、今週2個目のボギーを打った16番だ。

2つ前の組で回る立山が、17番までに9アンダーの大爆発で、1打差まで迫る勢い。
「でもそれでかえって吹っ切れた」と、17番パー3で6メートルを奪い返した。
迎えた18番は第2打が、右の林の木の根もと。スタンスが取れず、ちかごろ練習もご無沙汰だった左手打ちはみごとに失敗したが、でも問題ない。「立山さんが、18番でボギーを打ってくれていたので助かった」と、自身も苦笑いのボギーフィニッシュにもなお1打リードに両手を広げ、おどけたしぐさで逃げ切った。

前回の優勝は結婚2ヶ月後の2008年は7月の「アジアパシフィック パナソニックオープン」。以来、700日ぶりにようやく掴んだツアー通算9勝目は前回よりも、さらに甘い優勝シーン。
元アイドルの妻、絢香さんから頬にキスの祝福を受けて「何と言っていいのか」と、照れまくりだ。

ゴルフはますます脂が乗り始める31歳。守りに入るのはまだまだ早い。これで賞金ランキングも10位に浮上。気持ちも一気に加速した。「これからも、攻めることを忘れずに頑張りたい。若手には負けない!」。
自身初の賞金王獲りに向けて、改めて宣戦布告した。
  • 最終18番は、左の曲打ちを披露、しかし失敗して「左もたまには練習しなくちゃ!」
  • それでも最後は余裕のV9で
  • 主催の九州朝日放送(株)の武内健二・代表取締役社長から受けた栄光のカップと
  • そして何より嬉しいのは優勝副賞の「VanaH(バナエイチ)の天然水素水」1年分。去年からお取り寄せで夫婦揃って愛飲しており「本当にここのお水は美味しいんです!」

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