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ダンロップフェニックストーナメント 2008

石川遼が単独2位

世界のトップランカーが集うダンロップフェニックスは、海外から取材に駆けつけた報道陣も多い。この日最終日に行われた会見は、最後にオーストラリアAP通信のアンドリュー・ボスさんが、石川にこんな質問。

「マスターズノショウタイハ、ホシイデスカ?」。

ボスさんが一生懸命覚えたたどたどしい日本語に笑い声が沸き起る中、石川は間髪入れずに応えた。
「もちろん欲しいです!」。

マスターズトーナメントは賞金ランキングや数字に関わらず、大きな国際大会で活躍するなど前年度にめざましい活躍をした選手に招待状を送ることがある。
ここ数年は特にその傾向が強く、今大会チャンピオンのプラヤド・マークセンも今年、それで初出場を果たしたし、さらに過去の例で言えば2003年のカルテックスマスターズで中国人として初の欧州ツアーチャンピンに輝いた張連偉(ちょうれんい)や、2006年のアジアと欧州共催のHSBCチャンピオンズでタイガー・ウッズを2打差で下した韓国のY・E・ヤンなども特別招待を受けている。

それを踏まえた上での質問だと石川も心得ていて、「マスターズ委員会の方やその関係者のみなさんに、僕の名前やプレーなど少しでも何か印象に残っていればいいのですが」と、祈るように話したがこの日最終日のプレーだけでも十分にインパクトはあった。

ワンオン狙いの13番パー4は左バンカーに入れたが、そこから絶妙なタッチでピンそばにつけて、首位と1打差。
16番でこれまたバンカーから寄せた1.5メートルのパーパット「打ち損ない」と、外して結局1打差で破れたが、最後までリーダーを脅かした。

最終18番パー5は、2打目のピンチから見事なバーディを奪った。
左サイドのフェアウェイバンカーは深いアゴ。しかもその先には絡み合う松の幹。
5番ウッドである程度の高さを出しつつ、枝と枝のわずかな隙間を通し、フックをかけるという高度な技でフェアウェイに脱出成功。
チャンスにピタリとつけて、バーディで締めくくった。

ポールターやエルスなど世界の強豪をしのぐ今大会の単独2位は開幕前に本人も絵に描いたとおりの決着だ。賞金2000万円を加算して、獲得賞金は9973万166円(ランク5位)。
たとえば次週、初出場のカシオワールドオープンで万一予選落ちしても最終戦のゴルフ日本シリーズJTカップは予選カットのない大会で、4日間さえ完走すれば最低でも80万円前後の賞金が得られる見込みだ。

そうなればゴルフ界のみならず、日本のプロスポーツ史上としても最年少での1億円プレーヤーの誕生だ。
それだけに「シリーズは骨折してでも出る」。
本人もそんな青写真を描いていたが「なぜか今週2位なら…と思ってしまったんです。なんで優勝ならと、思わなかったのか」。
そう言って勝てなかった悔しさをにじませたが、ツアー1勝を含む今年の結果だけでも、かの地の人々に相当な印象を与えているはずだ。

オーガスタでの優勝はゴルフを始めたときからの目標だった。
わずかプロ1年目にしてそれほどの夢までも、かなえようかという勢い。
鮮やかなまでに記録を次々と塗り替えていく17歳は、大人たちの想像を絶するスピードでその階段を駆け上がっている。

最終日、同組で回ったブラント・スネデカーは今年のマスターズで3位に入った選手だ。「リョウはワールドクラスの選手。とても良いプレーで17歳とは思えない」と絶賛。そして、「マスターズで会おう」とのメッセージを残した。


  • スネデカー(左)は石川に「マスターズで会おう」とメッセージ!

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