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三菱ダイヤモンドカップゴルフ 2004

テツの男・平塚哲二は、転んでもタダでは起きない!

一度は絶望した今シーズンだった。開幕戦直後の3週間のオフ時、ラウンド練習中にコースで転倒。そのとき強打した左胸は剥離骨折の恐れがあり、左ひざは、じん帯断裂。全治3ヶ月以上の深刻な怪我に、「今年は、もうダメだ」とあきらめかけた。
クラブも握れないまま過ぎた2週間。使わない左足は、見る間に痩せこけていった。 太もも内側や股関節、ひざの筋肉はあっという間に削げ、以前の半分くらいの太さになってしまった。 このままでは本当に、当分ゴルフができない体になってしまうかもしれない。
「やっぱり頭で考えているより、まずは体を動かそう」と、平塚は思った。
小さいころから、そういうところがあった。悪ふざけが過ぎて生傷が絶えなかったが、翌日にはケロリとして遊んでいることもしょっちゅうだった。額を割り、血がダラダラと吹き出し ているのに、医者にもいかず自然治癒させたこともある。体を動かしていれば、いつの間にか傷も癒えていた。
「だから昔から、怪我には慣れているんですよね(笑)」。試合に出る、と決めたとき、主治医は「止めても、どうせお前は行くんやろ」と言った。「ゴルフをしていないと、息が詰まってしまう」と、“やんちゃなテツ”そのままの顔で、平塚は笑った。
怪我をおしての出場には、思いがけないメリットもあった。
患部に負担をかけないシンプルなスイングに取り組んだことで、「あ、こんなふうに振っても意外と飛ぶんや」「こんな球筋も、打てたんや」。ショットのバリエーショ ンが広がった。
トレーニングも再開できるほど、回復しつつある今週は、怪我する以前の通常のスイングに戻して、「ティショットは、絶好調」。
打撃練習であまり球数が打てなかったときは、その分、パッティングに多くの時間を当てることもできた。内藤雄士コーチに教わった、グリーン上に紐を引っ張ってその上で打つ練習方法で、ラインのイメージがうんと出しやすくなった。おかげで、大洗での再三のピンチも、好調のパットでしのぐことができたのだ。
「不幸中の幸い。まだ、完治まであと2ヶ月はかかるといわれながら、こうして2勝目 をあげることもできたし、今は、怪我をしたことがかえって自分にプラスになったと思っています」。
昨シーズンは、体調不良も多少の故障もものともせず、全試合出場を果たしてアイアンマン賞を受賞している。“テツの男”は転んでも、けっしてタダでは起きないの だ。

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