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長嶋茂雄INVITATIONALセガサミーカップ 2021

「チーピンOK、ラフOK」稲森佑貴のなりふり構わぬ大作戦

真っ直ぐ飛んでけ〜©JGTOimages
好きこそものの上手なれ。
日本一曲げない男が、コースとの関係修復に懸命だ。
おかげで3日目に、ボギーなしの「66」を出して上昇した。

この3日間とも徹底して鬼門を避けてきた。
初出場を果たした6年前。
2015年の予選ラウンドの組み合わせで、いきなりジャンボ尾崎と当たった。
その2日目に、13番の第1打の右OBは、「おそらくレギュラーツアーで最初で最後」。2打目や池ポチャならこれまでにもあるが、「ティショットのOBは多分、それが唯一」。

ちょうどその年、2015年からフェアウェイキープ1位を続ける稲森にとっては忘れることのできないある意味、稀有な1打。

「おそらく、ジャンボさんとの緊張もあったと思う」。
痛恨のボギーで、一時は予選通過も危ない位置まで落ちたが「まだホールは残っている。ここからバーディ獲れ」と、ジャンボに背中を押してもらったこともまた、鮮烈な思い出だ。

「そこからOB打った分の上乗せくらいバーディが獲れて。『予選通れてよかったじゃないか』と」。お褒めの言葉も覚えている。

初々しい二十歳の一場面だ。

以来、13番では「死んでも右に行かない、と思っている」と、この日もなりふり構わず「チーピンOK、ラフOK」と、生き残りに徹して、左ラフをキープ。
そこから3メートルのチャンスを作ってバーディで通過すると、そこから尻上がりに通算13アンダーまで伸ばして単独3位におさまった。

たっぷりと広いフェアウェイは、北海道の青空に映えて美しく、吹き抜ける風も心地よいが、ここのコースは飛ばし屋向きとも言われる。
「僕も、一番最初に出た時は好きだと思ったんですけど」。
初年度はジャンボの励ましもあって、10位タイまで順位を上げたが、「僕は飛ばし屋じゃないから、ちょっと長めの番手を握るので、そこらへんの精度も問われると思うし油断できないホールが多い。段々年を重ねるごとに、得意じゃないという感じになって」」と、その後は徐々に苦手意識が強くなっていたという。

「でも得意じゃない、と思っちゃいけないのかなと思って。好きなままで行ってみようと思って」と、今年はコースとの初めての出会いを再現。
「無理にがっついて獲りに行くというよりは、初日から全ホールパーでいい、くらいの気持ちで」と、あえて周囲のバーディ合戦から身を引き、「チャンスについたらパターで頑張る」と、自分の得意分野に集中することで、流れを引き寄せた。

1差で敗れた先月7月の日本プロに続いて、V争い2連戦にこぎつけた。
昨年10月の日本オープンに続く、シーズン2勝目のチャンスを作った。

首位とは5打差。
「明日は明日のゴルフを。悔いの残らないゴルフをしたいのが一番」。
日本一曲がらない男が狙うのは、手堅い大逆転。
最後にコースを大好きになれる。

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