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ダンロップフェニックストーナメント 2015

藤本佳則が前半パーなしの珍スコアで首位タイに

前半の9番で7メートルのバーディトライが沈んで、とうとうめったにないスコアカードが完成した。“ビリケンさん”自身も途中からそんな予感がしていた。「途中から、俺このままパーが1個も取れへんのん違うかな」。
的中した。9ホールすべて丸と三角が並んだ31は、大会の9ホール最多獲得数タイ記録の7つのバーディと、2つのボギーで埋め尽くされて、「なんか、自分でも気持ち悪かったよ」と、笑った。

「だけど、バーディは一杯取れているんでね。それはヨシとするか、と」。
2日目は1番で2メートル弱のチャンスを決めると、出だしから快調だった。2番では4メートルを沈めて、3番では左バンカーからボギーを打ったが、4番では「267ヤードから、スプーンでかすって、寄らなかった」。6メートルのバーディトライ。「けど、これも入った」と、今週は火曜日の練習日が雨。水曜日のプロアマ戦も大雨で中止と、ラウンドの中で、結局一度も試せなかったマレット型のセンターシャフト。

「でも、使ってみるか」と、宿の部屋で素振りを試したくらいの新パターをほぼぶっつけ本番で投入して、吉と出た。
「ヘッドの大きさが、前のより少しデカくていい感じ。急に変えて大丈夫か、って? 選択が間違っていたら、この位置にいない」と、分厚い胸を張った。

昨年のこの大会は、松山英樹と回っていた2日目に苦渋の選択をした。自身初の途中棄権。「朝イチから左首の付け根から肩にかけて、すごく痛くて。でももともと、我慢するタイプなので。いけるかなって」。無理を押して出ていったが、ホールを経ても、いっこうに痛み止めの薬が効いてこない。
「薬のんでもあかんって、大丈夫かな?」。不安にかられて、後半の10番ホールを終えた時点で離脱した。
「プロとして18ホールをプレーするというのは当たり前のことなので。そうした中で、あのときはある程度の覚悟が要った」と、二度とあんな思いはご免と今シーズンも、序盤からあいにくの故障続きも、「たいていのことは、痛くても我慢する」と、踏ん張ってきた。
6月には左手首の腱鞘炎。9月にようやく治まってきたと思ったら、今度はちょうどその裏側を痛めた。
「それもやっと治ってきて。しっかりトレーニングが出来るようになったのも、10月に入ってから」。
じっと我慢で、やっと宮崎での昨年のリベンジを、にらめる状態に持ってこられた。
来月には、第二子の出産を控えて、無類の子ども好きは、「いつかな、いつかな」と実は毎日、気もそぞろ。
そんな旦那だからこそ、ひとつ上の女房が手綱を締める。
「ほんまにスポーツ選手の奥さんにはぴったりのしっかり者で。もし生まれても、帰ってこんといてよ」と、旦那の本音もすっかりと読まれている。
「こっちは大丈夫やから。あんたはゴルフでしっかり稼いできて、と。おかげで集中出来ています」。

1歳になる長男の源都(げんと)くんも、そしてまだ見ぬ子も、「今勝ったって、まだ何もわからへん。物心ついて、オヤジが勝ったと分かるころまで、頑張っていたいよね」。とはいえ、出産前のツアー通算3勝目で、しっかり者の妻・祐未さんにも報いたい気持ちで一杯。
そのための舞台も、申し分ない。「この大会は、世界の選手が集まってくる唯一の試合で、今まで勝っている選手達も凄い人たちばかり。ここで優勝出来たら素晴らしいと思います」。錚々たる歴代覇者の中に、ビリケンスマイルを刻んでみせる

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