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ゴルフ日本シリーズJTカップ 2013

宮里優作は「バカになる」【インタビュー動画】

前日はダブルボギーにした屈指の18番も含めて、この日2つのボギーを差し引いたとしても、十分すぎるおつりが来るこの日の64だった。この日の優作は、神がかっていた。どれもピタピタと、ピンに絡めて奪った3連続バーディの後の8番パー3で、「良い流れを作れた」。ダブルボギーも覚悟した場面。

ティショットを左に引っかけて打ち込んだバンカーは、砂が薄くてすっぽ抜けた。大ホームランでグリーンの外まで転がり落ちた。「せめて2、3メートルのボギーパットが残れば」と、サンドウェッジで狙った20ヤードのアプローチは、カチコチのグリーンを滑らかに転がり、カップに消えた。

奇跡のパーセーブに、会場はどよめいた。「あれはほんとにラッキーでした」と本人も勢いに乗ったまま、3打差の単独首位でいよいよ最終日を迎える。

アマチュア時代から、誰よりも期待を集めながら33歳を迎えた。アマチュア時代も含めて、最終日を最終組で迎えたのは実に16回。「・・・常連じゃないですか!!」。そんな風におどけて言うようになったのは、ここ最近だ。
以前はどちらかというと、ひたすらストイックに目の前の1打と向き合うようなところがあったが、この日も惜しいパットに「ああ〜!」残念そうな声をあげるギャラリーにも屈託のない笑顔を向けて、自分から楽しそうに会話をしたり、周りの風景も見ながらプレーをする姿には、余裕すら漂う。

単独首位で最終日を迎えるのはこれが初。「そうみたいなんですよね」と、笑いながら「明日どうなるかはまだ勝ったことがないから分からない」と、真正直に応えた。
「3打差も、有利に進められるとは思いますけど8アンダーくらいの選手にも、チャンスはある。差はあってないようなもの」と、現実も冷静に見据える。

3打差で追いかけてくるのは、2つ上の先輩。「今季絶好調の谷原さん。大学のときからお世話になっている先輩と、こうやって戦えるのは感慨深い」とそこは生来の生真面目さで答えながらも、これまた以前なら、あまり言わなかったやんちゃな口ぶりで、「でも試合に入ったら関係ない。明日は絶対に、気は遣わないです!!」。
飾り気も遠慮も抜きで、ぶつかっていく。「明日は、自分らしくバカになってやります」とは、「それだけ一生懸命にやるってことですね」。誰もが心待ちにしているその瞬間。それも何より本人が一番に「優勝という、最高の形を持って帰れればいい」。プロ11年目の悲願達成まで、あと一歩だ。


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