記事
バンテリン東海クラシック 2026
「記憶がぶっ飛びました」桂川有人が劇的Vで見せた人生初の雄たけびと成長の証し
凱旋の桂川有人(かつらがわ・ゆうと)が、地元開催のホスト試合で、欧州と日本ツアーをまたいでの2週連続Vを達成した。
妖精、と呼ばれた男が咆哮した。
田中裕基(たなか・ひろき)と並んで入った18番。2打目をピン6メートルにつけた田中に対して、桂川のバーディパットは13メートルはあった。
「田中くんは絶対に入れてくる。自分も入れるしかない」。
最初スライスしたボールが、最後の最後にフックしながらカップに沈んだその瞬間、桂川が吠えた。
「相当、気合が入っていたのか、記憶がぶっ飛びました! 叫んだのは生まれて初めてかもしれない」。
万感の拍手に包まれ涙ぐんだのも、これが初めて。「地元の温かい声援と、家族の前で勝てたというのにぐっときた」と、目を赤くした。
特に、父親代わりとして4歳でクラブを持たしてくれた祖父・征男さんの前で初めて見せた優勝だ。
「私が100回打っても入らない!」。最高ハンディキャップ1まで行き、三好を回り慣れた征男さんさえ度肝を抜いた劇的なVシーンとなった。
大会初の地元県勢Vと、自身通算3回目のホストVには本人が一番びっくりした。
「プレッシャーを力に変えられるタイプではない、と自己分析していたので。なぜここで勝てたのか? 本当に不思議です。自分じゃないみたい」。
参戦3年目の欧州・DPワールドツアーで、自分でも気づかぬうちに覚醒していた。
上位100人のシード権が確定する先週の「ジェネシス選手権」をランク106位で迎えて、通算2勝目を達成していた。
土壇場で、ランク28位にジャンプアップし、次週からのプレーオフ進出を決めた勝負強さは、国内開幕戦「東建ホームメイトカップ」に次ぐ今季の2戦目の日本ツアーでも継続していた。
桂川が、きょう最大の窮地に選んだのは、右の傾斜の深いラフから打ったアプローチがボールの下をくぐる空振りで、「まさか、そのミスもあったか」と、ダブルボギーに茫然とした16番ではなく、そのあと、田中に並ばれて入った次の17番パー4で、ティショットを左のバンカーに入れたシーンだ。
「アゴが高いので、グリーンを狙えない。一番入れちゃいけないバンカーでした」。ミスも重なり、2打目は出しただけのようなショットになった。77ヤードも残った3打目は、想定以上のバックスピンで約3メートルもパーパットが残ったが、これをしのいだ。
「そこが、きょう一番のポイント。これが、最後のバーディパットにつながりました」。
地元愛知のホスト大会での欧州⇒日本の2週連続Vが、この3年の成長を如実に語った。
「サポートしていただいているから、海外にも挑戦できている。優勝という形で恩返しができてうれしいです」とハニかむ笑顔はやっぱり、日大先輩の岩﨑亜久竜(いわさき・あぐり)が学生時代の桂川を回顧して称した「妖精」そのもの。
翌月曜日にはUAEに飛ぶ。アブダビと、ドバイでの2連戦はポイントランキング上位10人に付与される、来季PGAツアーの出場権をかけた大事な戦い。
「来年はアメリカでプレーできるように、頑張ってきます」。
大勢の地元ファンの前で誓ったVスピーチも、さっき咆哮していたのがうそみたいに穏やかだった。













