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アジアパシフィックオープンゴルフチャンピオンシップ パナソニックオープン 2009

ボランティア奮戦記<パナソニック編>

最終日、石川の組の移動式スコアボードを担当したパナソニックの佐藤さん
この日最終日は午前11時を過ぎた時点で、すでに1万人を軽く超えた。4日間は延べ3万7104人。駆け付けたギャラリー数も破格だが、大会に協力くださったボランティアの数もまた、半端ではなかった。

4日間で延べ1343人。そのうち、地元京都府南部ゴルフ協会から879人。開催コースの城陽カントリー倶楽部のメンバーさんから212人。そして、大会主催のパナソニックの社員のみなさんが252人も参加して大奮闘。中でも社歴11年、大会の地元・京都府在住の佐藤成悟さんが、最終日に担当したのは弱冠18歳のホストプロ、石川遼の組の移動式スコアボードだった。

同社は昨年の第1回大会の直後に社名を松下電器産業から、パナソニックに変更したばかり。
社名が変わってから最初の大会で佐藤さんも、「会社のブランドイメージをあげるための一助になれば」と勇んでかって出たものの、初体験のボランティアで「まさか、遼くんの組を受け持つことになろうとは」と、絶句した。

この日最終日の朝、担当する組の抽選結果が発表されてからというもの緊張で、佐藤さんは「ご飯も喉を通らなかった」と苦笑する。
いざ、スタートティに立ち、石川と初対面。「よろしくお願いします」と握手を交わした際には、その「目力(めぢから)」に圧倒されたという。

昨年よりは断然逞しくなったとはいえ想像していたよりも、まだまだ華奢な背中に大勢の人々の期待を一身に背負い、「“僕はやるぞ”という気迫に満ちていて・・・。私も頑張って、業務をまっとうしようと思いましたね」(佐藤さん)。

ホールごとのインターバルは超満員のギャラリーでごった返し、佐藤さんもついていくのだけで必死だった。
各選手のスコアが動くたび、次のホールに行くまでに移動式ボードの数字カードを変えておかなければいけない。
つい手間取って、少しでも遅れるとあっという間に人波にのまれてしまう。
厳しい残暑に、喉を潤す余裕もなかった。「スミマセン、スミマセン」と人混みをぬいながら、きつい傾斜も懸命に駆け上がった。

佐藤さんにとって、まさに過酷な18ホールは石川にもまた同様だった。ましてこの日は厳しいピン位置に、パットが決まらず8番、9番で連続ボギー。
また、佐藤さんにも非常に心苦しかったのが、ところかまわずに鳴るギャラリーの携帯カメラのシャッター音。
そのために、石川は何度も仕切り直しをしたり、あきらかに集中力を欠く場面もあったが「カメラを撮っている人は、初めてトーナメントに来てくれて、まだマナーを知らないのかもしれないし」とけなげに言って、常に前を向く18歳に、佐藤さんも心打たれた。

そして、ホストプロは最後にきっちりと見せ場を作ってくれた。
上がり2ホールで連続バーディ。しかも、18ホール中3番目に難しい最終18番は、一度はOBゾーンに落ちたボールがインバウンズに転がり落ちてきたばかりか、難しいバーディパットを決めて、最後の最後にいつものガッツポーズを披露してくれた。

石川の最後まで諦めない姿勢に大いに励まされたという佐藤さんは、ホールアウト後の握手の際に、石川からふいにグローブを手渡され、さらなる感動のあまりしばし呆然。思いがけない贈り物を大切そうに握りしめ、「また明日から頑張って働けそうです。遼くんがゴルフであれだけ頑張ってくれているのですから。僕は仕事で、これからも会社を盛り上げていこうと思います」と、胸を押さえた。

大会初日に出遅れた石川は、恐縮しきりで「最初は、ホストプロとしての緊張があったと思う」と、打ち明けている。
しかし、「会場にはパナソニックの方々がたくさんいてくださって、それだけで僕にはアドバンテージがある」と、佐藤さんをはじめ大勢の社員のみなさんの声援を力に変えて、大会初の決勝ラウンドに進出し、週末も連日の大ギャラリーを引き連れて、大会を盛り上げた。

最後にグリーンの端っこでそっとフェアウェーのほうを振り返り、コースに向かって真摯に一礼した石川は「社員のみなさんに支えられて、最後まで頑張ることが出来ました。我慢する姿勢を京都のゴルフファンのみなさんにも見ていただくことが出来ました。ほんとうにありがとうございました・・・・・・!」。
  • スコアが動いたホールでは、次に進む前にまず素早く数字を入れ替えなければならないが、初経験のトーナメントのボランティアにはこのタイミングがなかなか難しい・・・!!
  • 最後に連続バーディできっちり締めた石川の姿に佐藤さんも感激・・・!!
  • さらに最後に思いがけず、石川からグローブを手渡されて感無量・・・。
  • 最終日に登場した「遼クンがんばれ」の真っ赤な垂れ幕。大勢の人の期待を一身に背負い、日々戦いを続けている。けなげな姿を目の当たりにして社員のみなさんも感激だった

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