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サン・クロレラ クラシック 2009

石川遼が完全Vに王手

難ホールが続く通称“北のアーメンコーナー”で、ちらっと頭をよぎった。「これが小樽の洗礼かな」。504ヤードと距離が長く、池が絡む16番パー4は、左ラフから残り195ヤードの第2打が、テイクバックで背後の木に当たる可能性があった。
用心して4番アイアンを短く持った分、「少しリズムが早くなった」。トップの位置も浅すぎた。
わずかに届かず、ボールは手前の池に沈んだ。

「終盤のミスは大きなダメージにつながる可能性があるから。絶対にやってはいけないミスだった」。
さすがの17歳にも、心に動揺が走ったという。

しかし、怪我を最小限にとどめた。
4打目をピン左横3メートルにつけ、これを沈めた。
「あのボギーパットを入れたのが大きかった。あそこが今日、一番の山場でした」と振り返る。

ボギーなしの7アンダーで回った初日と比べると、確かにミスは多いがこの程度なら“洗礼”とも言えない。「1アンダーなら十分。ピンチも少ない方だと思う」と、悪い予感も吹き飛んだ。

前日に引き続き、4つのパー5ですべてバーディを奪ったこの日は、2番パー4などパッティングでカップに蹴られるシーンが何度かあり、最終ホールでもその憂き目にあった。

奧から3メートルのバーディパットは、「読み通り、完璧に打った」という。
だから、カップインを待たずに右手で拳を握った。
この3日間というもの、あえて淡々とプレーを続けてきた54ホール目の最後に、「今週いちばんのガッツポーズをしようと思っていたのに」。
体は自然とその体勢に入っていたが、ボールはわずかに左にそれてたちまち拍子抜けした。

脱力して、苦笑・・・・・・。
「でも、これが最終日の16番とかだと悔しいですけど。まだ3日目ですから」と気落ちもなく、ふと目をやったグリーン横のスコアボードには、むしろ胸が躍る。

3位に豪州の強豪、ジョーンズ。
4位に先週優勝の藤田寛之、若手好敵手の池田勇太。
そして、7位には片山晋呉と矢野東が居並ぶ。
ツアーで自身初の完全優勝がかかる最終日は、「憧れていた先輩たちに、追いかけられる立場」となる。
「テレビで見れば、これ以上ないくらいの盛り上がりになる」。
その中心に自分がいることに、目を輝かす。
「今までとはひと味もふた味も違った18ホールになる」と、腕まくりする。

2打差の単独首位に、「まだ王手とは言えない。将棋でいえば、歩がと金になった状態」と、厳しい戦いを覚悟しつつ、「シンプルに考えて、優勝にいちばん近いのは僕。自分が有利だと思ってやる」と、リードを最大限に生かす構えだ。

もし勝てば、優勝賞金3000万円を加えて賞金ランキング(国内のみ)で初めてトップに立つ。
2週後に控えた今季メジャー3戦目の全米プロにも弾みがつく。
「良いイメージを持って行きたい。明日1日で、台無しにしないよう、今日みたいにまた思いきってドライバーを振っていく」。
北の大地でいよいよ集大成だ。

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