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ゴルフ日本シリーズJTカップ 2008

石川遼が首位と2打差の4位タイ

正確なスイングとヘッドスピードが揃わないと、よほどの選手でも使いこなせない。いまやバッグに入れる選手はほとんどいないといっていい。17歳が、2番アイアンでこの日3つ目のバーディを奪ったのは最難関の11番だ。
500ヤードと距離があるパー4の第2打はピンまで残り205ヤード。

強風が吹き荒れる中、「低めに押さえちゃってみようかな」などと、こともなげに言って手前1メートルにピタリと止めて、出場選手の中でこの日ただ一人のバーディを決めた。

続く12番パー4(432ヤード)は大フォローの風も手伝って、なんとピンまで残り100ヤード。
ティショットが「普段は行かないようなところ」の木に当り、フェアウェイまで戻ってくるラッキーもあり、楽々とピン1.5メートルにつけて連続バーディを奪った。

昨年も大会2日目に、同じ組で回ったが、あまりの緊張からボロボロに崩れた。
憧れの片山晋呉に、確かな成長のあとを示した。

「ナイスショット!」との片山の言葉に、確かに気持ちがこもっていたと感じられたのは、16番のティショットだ。
強いフォローの風に迷ったあげく、片山がスプーンを握ったパー4だ。
対して石川はいつものようにドライバーを持って振り切った。

もしもドライバーで打っていたら、片山が思い描いていただろう弾道を描き、ピンまで35ヤードのところまで飛ばした。
「あのときの片山さんの“ナイスショット”はこれまでの言い方とは違ったと思う」と、石川は振り返る。

そして、ツアー屈指の難しい最終18番パー3は、左から5メートルのバーディパット。
カップを1メートル行きすぎたが片山は「ナイス!」と、これまた力強い声で褒めた。
急勾配の下り傾斜は「強く打っちゃってたら、グリーンを出ていたパット。よくそこで止めたな、と、ナイスタッチだということで、言ってくれたのだと思う」。

週末の優勝争いに加わることが、今週の目標だった。
「今日はそれが達成できたかな」と、満足そうに微笑んだ。
「最後まで、気持ちが風に負けなかったと思う」との言葉に確かな自信がのぞいていた。

もし勝てば今大会最年少優勝ばかりか、日本と名のつくトーナメントでの最年少優勝だ。
1928年に19歳9ヶ月17日で日本オープンを制した浅見緑蔵氏の記録を抜ける。

もはや誰も、彼を“17歳”とは思っていないかもしれない。
これまで「遼くん」と呼んでいた矢野東がこの日は「石川」と呼び捨てにして、「あいつだけには勝ちたい」と、ムキになった。
この1年間の戦いぶりに、同じ舞台で競い合うライバルと認めた証しのひとつだろう。



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