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ゴルフ日本シリーズJTカップ 2007

石川遼くんが今季ツアー最終戦

東京よみうりカントリークラブの最終18番は、前の17番セカンド地点から、その全容が見下ろせる。この日集まったギャラリーは前年を大きく上回る9288人。同組で回った篠崎紀夫は、「18番グリーン回りが真っ黒に見えた。それがすべてお客さんだと分かったとき、身震いがした」と振り返ったが、普通の16歳ならそこで怖気づいてしまうところだろう。

史上最年少優勝を飾った5月のマンシングウェアオープンKSBカップは最終ラウンドの17番でバンカーから劇的なチップインバーディ。
ここぞというときに、奇跡の1打が打てることこそ「石川くんがスターだという証」と言ったプロがいたが、まさに今季最終戦で改めてそれを証明してみせた。

ツアーでも屈指の難ホールと呼び声高い最終18番パー3は、恐れるどころか「楽しみなホール」であり、本人も「調子がいい」と言っていた、ロングアイアンの精度を披露するのに絶好の舞台であった。

大観衆が見守る中、ちゅうちょなく握った3番アイアンはピン奥3メートル。
プロすら警戒する急な下りのフックラインも読みきって、ど真ん中からねじ込んだ。

バーディフィニッシュに何度も何度も握り締めたのは、無意識に出たというプロばりのガッツポーズ。
さらにその手でいま沈めたばかりのボールを大観衆にめがけて投げ込んだ。

「100回に1回くらいしか入らないパット。それが50回に1回くらいは入るようになったかな。少しはうまくなったということでしょう」と得意満面で振り返ったが、そんな堂々としたプレーぶりとは裏腹に、ホールアウト後は試合で初めて被ったという紺色のキャスケット帽を丁寧に脱いで挨拶。

クルクルと角度を変えて360度。グルリと取り囲んだ満員の観衆に向かって何度も律儀に腰を折り、今年1年の感謝の気持ちを表した。

初優勝のテレビ中継で、瀬戸内海放送の多賀公人アナウンサーがそう呼んだことからあだ名がついた「ハニカミ王子」は翌3日(月)に大賞が発表される「2007年度の新語・流行語」にノミネートされている。
16歳らしからぬ大胆なゴルフばかりか、コースでの振舞いや発言、ファッションまでもが社会現象ともなり、ゴルフ界ばかりか日本中を熱狂の渦に巻き込んだ。

今年、ツアーは初出場から数えて8試合に出場。
並み居るプロに混じって泣き、笑い、奮闘した今シーズンも44回という長い歴史の中で、大会史上初となるアマチュア出場を果たしたこの最終戦で、いよいよフィナーレを迎えた。

これまでは、テレビやロープの外からでしか見たことがなかった憧れの今大会。
今年はその内側でプレーして、2日目には片山晋呉との最終組で「夢のようなラウンドでした」と振り返る。

最終日こそ出入りの激しいゴルフで通算7オーバーの24位タイで終わったが、大会のチャンピオンや賞金王に負けない主役級の輝きを放ち続けた4日間。
最後は全員参加の閉会式にも出席し、5年ぶり2度目の賞金王を決めた谷口徹の胴上げの輪にも加わった。

終了後には、応援してくださったみなさんへ感謝をこめてボールを投げ込むセレモニー。
殺到したファンにもみくちゃにされながら終始、笑顔で声援に応えた。

「優勝するまでは、普通のジュニアでした。でも優勝して、生活のリズムがガラリと変わり、今年は今までのゴルフ人生の中で、一番内容の濃い1年でした」。
16歳、激動の2007年が終わった。

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