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日本プロゴルフ選手権大会 2005

川岸良兼「いちど薄れた欲がまた、よみがえってきました」

最終18番、556ヤードのパー5。その瞬間、歓声とも悲鳴ともつかない声が、あちこちからもれ聞こえた。
300ヤード地点をはるかに越えて落ちたティショットは、硬いフェアウェーをどこまでも転がって、およそ350ヤードのところでようやく止まった。ピンまで206ヤード。ダウンヒルのライから6アイアンで5メートルに寄せて、バーディフィニッシュ。
怪物と呼ばれたデビュー当時を彷彿とさせるビッグドライブで、川岸が魅せた。

一昨年の夏、高い球筋を求めて取り組んだスイング改造が、実を結んでいる。
加えて、師匠・ジャンボ尾崎のアドバイスが、奏効している。
「ラウンド中は、タイミングとバランスだけを大切にしろ。アドレスに入ってから打つまでが長いのが、一番いけない」。

躊躇なく思い切って振り切るスタイルで、飛んで曲がらないショットを取り戻した。

ここ玉名カントリークラブは開幕前から、飛距離より方向性を問われるレイアウト、といわれていた。川岸も、「OB杭が見えるとすごく怖いし、ここは攻めるばっかりじゃだめ。引くところはきっちり引いて、2パットで行かないと無理なコース」と、承知しつつも刻むホールはほとんどない。

「だって、刻んでも難しいから。曲がるとすぐにOBだけど、そうなったらしょうがない、と思ってやってるんです」。
今週の川岸にとって、攻めこそ守りなのだ。

15番パー4で、残り132ヤードの第2打を直接入れてチップインイーグルを奪うなどボギーなしの65で回って、優勝戦線に急浮上。
過去ツアー6勝の経験があるが、日本と名のつくタイトルはまだない。
シード落ちを喫し、出場優先順位を決めるファイナルQスクールでも失敗し、「生きていても、いいことがない」とまで思いつめたのが2001年。
再びここまで這い上がり、「4、5年前には薄れていた欲が、またよみがえってきました。手ごたえもあるし、戦えるゴルフに、なってきているから」。

復活の足音は、力強い。

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