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三菱自動車トーナメント 2000

「スタートする前には5打差あって、それに追いついて勝てたってことはすごく自信になるんじゃないかと思う」宮瀬博文

 プレーオフ2ホール目、最後は、3メートルのイーグルパット。ラインを読むためにしゃがみこんだ宮瀬は、その姿勢のままうつむいて、しばらく顔をあげなかった。祈るようなしぐさだった。
 再び顔を上げたとき、それまでの宮瀬の表情とは違っていた。
 「絶対に入れてみせる―」
 そんな思いが溢れるようだった。

 「イーグルで勝てたこと。そして、スタートするときにあった5打差に追いついて勝てたこと、それが本当に嬉しい」と、目を潤ませた。
 本戦の18ホールは、我慢のゴルフだった。1番で1メートルのバーディパットを沈めたあとは、ひたすらパーで耐えしのいだ。その間、11アンダーの首位でスタートしたフランキー・ミノザが崩れ、7アンダーの2位だった佐藤信人がスコアを伸ばせず、次第に後退していった。

 最後の18番パー5。やっと、待ち望んでいたバーディが来たこのホールが、勝利へのキーホールとなった。
 3番ウッドで打った230ヤードの第2打は、ピンまで10メートルに2オン。このイーグルトライは惜しくもカップをなめただけではずれたが、バーディパットは20センチ。通算8アンダーですでにホールアウトしていた谷口徹と並び、プレーオフに持ちこむことが出来たからだ。

「あのイーグルパットは、正直言って、狙っていませんでした。結果的にはカップをなめはしましたけど、入るとは思えなかったから。
 ハーフターンしたあたりから、勝ちたい、勝ちたいっていう思いがあふれてきて、でも、なかなか(バーディが)取れなくて、すごくはがゆかった。でもなんとか自分に我慢しろって言いきかせて、それで最後にやっとバーディが来て、『ああ、我慢して本当によかったな』って思えた」

 プレーオフは、18番パー5の繰り返し。その1ホール目は「体が止まって、ひっかけた」と、右サブグリーンに行って2オンに失敗したが、2ホール目は235ヤードの第2打をピン3メートルにピタリ。

「打った瞬間、頼むからのってくれ!と思いました。ショットの前は、とにかく届かせることしか頭になかった。きっとあのショットは、今、打ったらきっと乗らないと思う。風はフォローはフォローなんですけど、気持ちが入ってるから飛んじゃってるだけで。あれはほんと、“バカ当たり”していましたね。
 本戦の18番のティショットあたりから、力が入り出したみたいなんです。『ここでバーディ取らなくちゃいけないな』って思ってバーンとドライバー打ったらすっごい飛んだんですよ。自分でもビックリするくらい。『うわ〜、(勝ちたい)気持ちが入ってるんだな』って自分でも感じましたね。その力(アドレナリン)をコントロールしたっていうわけじゃないですけど、結果的にうまく行ったという感じです。
 (プレーオフ2ホール目の)最後のイーグルパットを入れたのは、本当に嬉しかった。あれは入るとは、思わなかったですから」

 ウィニングパットを沈めると、感極まって両手でガッツポーズ。「4日間、ボギーは3つだけ。とにかく、ボギーをできるだけ減らして、チャンスを増やすことが課題だったから、今週のゴルフは100点満点」と納得顔。昨年11月の住友VISA太平洋マスターズでツアー4勝目を挙げたときより、「ドキドキしなかった。そこが成長したところかな」と宮瀬。さらに続けて、「でもまあ…もう来年は30歳だし、子供も3人もいますしね」と、照れ笑いした。

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