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中日クラウンズ 2025
大混戦で2度のチップイン「手で投げてるみたい」小技の名手・浅地が復活するまで
浅地洋佑(あさぢ・ようすけ)が、和合で4年ぶりのツアー通算4勝目を飾った。
大接戦の末に、2打差をつけて18番に入った。
1.5メートルのパーパットを打つ前から涙が溢れた。
「この4年間、ほぼいいことがなかったので。それを思い出して、普段泣くとかしないんですけど勝手に涙が出ました」。
急いで涙を拭いた。
「カッコつけている場合じゃない」。
短いパーパットも「寄せに行った」と、タップインのボギーフィニッシュ。
「大変、お見苦しいところを見せてしまって…。情けない」。
くの字に畳んだ背中に溝口キャディがそっと手を添えた。

異変は「マイナビABCチャンピオンシップ」で3勝目を挙げた21年。
シーズン最終戦後に、2週間ほどゆっくりして練習を再開すると、なぜか「飛ばないし、当たらないし、曲がるし、乗らないし」。
翌年、賞金シード落ち。
「勝った翌年に落とすって、なかなか経験できることじゃないし、経験したくないこと」。
練習場で打つことさえ恐怖になった。
「シャンクに、ダフリにトップも出ちゃって。ラウンドしても80打っちゃう。試合にも行きたくない。見られたくなかった」。
どん底を支えてくれたのは昨年から、20年ぶりに再タッグを組んだ植村啓太コーチだ。
「トップで右肘の角度が深すぎる、腕が曲がらないように。体から離れていかないように」。
強制器具を装着して練習を重ねるなど理論を体にしみこませて「だいぶ形になってきたところでした」と、植村さん。
共に水シャワーを浴び、4年ぶりの優勝を分かち合った。

3人タイの首位から出たこの日は、1番でバンカー目玉からの2打目がトップし、同組の小西たかのりの球に当たってボギー。
「当たらなかったらダブルボギーは確実、ラッキーでした。小西さんには今度ごはんを奢ります」。
運も味方に6番と、10番ではチップイン。
特にグリーン奥から決めた10番は、「完全に狙ってました。あそこで並ぶことができた」と、同組の岡田晃平(おかだ・こうへい)を捉えた。
2打目の左OBを免れた15番では、バンカーから寄せワンパー。単独トップに立った。
最初に10歳から3年間を指導することになった時にも植村コーチが「手で投げているみたい」と評していた天才小技は、ショットの不振時にも「唯一、変わらず維持できた部分」(浅地)と、難コースでこそ発揮。
強風下で、復調なかばのショットを幾度も救った。

4年ぶりのV会見で、「コーチやトレーナー、いろいろな人に自信をつけてもらった。本当に、周りのおかげでここまでこれた」と、感謝を述べたが「まだまだ、こんなもんじゃない」と、植村コーチ。
「ショットがさらに良くなれば、彼はもっと強くなる」。
4年ぶりの4勝目は、序章にすぎない。
完全復活を果たしたら、2人で海外にも本格参戦しようと話しているそうで、さっそく次週は日本開催のアジアンツアー「インターナショナルシリーズ ジャパン(5月8日ー11日)」に出場。
開催コースのカレドニアンGCは、浅地のメンバーコースだそうだ。
「目標はトップ5ぐらい」と控えめだったが、強風の和合を制した自信は、国際大会でも何よりの武器となる。
















