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飛ばなくても曲げなければ勝てる。稲森佑貴の生きざま

「日本一曲げない男」の異名を持つ稲森佑貴(いなもり・ゆうき)に、「メジャーしか勝てない男」の呼称が加わったのは、コロナ禍の2020年。「日本オープン」で通算2勝目を飾ってしばらくしてだ。

 

2018年の初優勝も「日本オープン」で、そんな例は過去になく、大変な名誉である。

 

でも、それが逆にネタとなり、周囲に「もう日本オープンだけでいいじゃん」とまで言われ出すと心中、穏やかではない。

「複雑な気分。気にしちゃいましたね」。

 

やっと返上の3勝目が、こだわりの「中日クラウンズ」で実現したのは誇らしい。

 

2015年に初出場で10位に入った時から相性の良さを感じて、「一番勝ちたい試合のひとつ」となったが、「経験が浅いころは、1ボギーであたふたしてどんどん視野が狭くなり、どんどん難しくして落としていたのかな」。

 技術と経験を要するコースと言われるゆえんだ。

 

でも、6季連続のフェアウェイキープ1位と、7年連続出場を重ねた今、「得意コースはどこですかと聞かれたら、和合と答える」。

 

2打差の3位タイから出た最終日は、雨脚が強くなるほどバーディ数を増やして8つ。4日間計21個で朝日インテックの最多バーディ賞を獲得するなど難条件ほど強さを発揮。

最後は3差の圧勝だった。


 

今年は大会3年ぶりの有観客開催も励みに「いつもとは違う気持ち、心構えで行こう」と開幕前から決めていた。

「1勝目が結婚前で、結婚後の2勝目は無観客試合でした。今度は、目の前で勝ちたい」と、令和2年の2020年2月22日に入籍し、昨年末に式を挙げた愛妻の生声援も励みに、最終日に選んだウェアは目も覚めるクラウンズブルー。

 

たくさんのギャラリーと、愛妻に見守られて「クラウンズブルーの優勝ジャケットを羽織るのが夢でした」と、日本一曲げない男は全身、青に染まって幸せいっぱい。


 

右も左もわからぬ17歳のプロ転向から11年。

会場でぺこぺこするばかりだった少年も今年28歳。「最近若い選手が増えてきて、僕も挨拶される側になってきて、だんだん古株みたい。おっさん臭がする」との自覚にあらがい、若手の台頭に対抗するため体を鍛え、つまみのポテチを春雨スープに変え、主食はささみに、お酒がわりのトマトジュースで、就寝前の飲食も禁止。

「いつまで守れるか。そういう戦いもある」と、コースの中でも外でも格闘の日々。

 

昨季は最終戦まで賞金王の可能性を残す5人に入れたとはいっても、最も不利な条件だった。

「今年は複数回優勝を重ねて、また賞金王を目指して頑張ります」。

 今年も、フェアウェイキープで79.018%を記録して早くも1位を独走するが、飛距離は平均265.75ヤードで110位。

たとえ飛ばなくても曲げなければ勝てることを究極の形で証明する。



曲げない生き方

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