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ゴルフ日本シリーズJTカップ 2018

選手会長は、ついに未勝利に終わる

悔しいです。
最終日は全員参加の表彰式で、ちょっぴり皮肉も言わせてほしい。1年の締めの挨拶に立った選手会長。
「小平智選手、ならびに小平選手のご家族のみなさん、本当におめでとうございます。心よりお慶び申し上げます」。
あとで敗れた小平にもそっと「悔しいです」と打ち明けた。スピーチではわざと、いんぎんな言葉遣いに石川は、尽きせぬ悔いをこめてみた。

今季最後に悲願の1勝を阻まれた。
スタートの1番で、左崖下に落とす波乱の幕開けから懸命に巻き返して今季最後のV争いに加わった。
17番パー5で1.5メートルを沈めてついに首位に追いついた。
4人が並ぶ大混戦で、恐怖の18番では急傾斜のピン左横から、6メートルのバーディトライ。
「入ったら奇跡というパット。しかし、本当に入りそうだった」。カップをなめて行き過ぎたが「いい集中力で打てた。優勝の可能性を感じさせるパットができた」。1メートル残ったシビアなパーパットは今度はかっきり沈めて選手としても、今年の最後の最後に盛り上げることができた。

大会史上初の3人によるプレーオフという歴史的な一幕にも「他人事ではなく、自分がその場にいられたことは、光栄でした。個人的には優勝がなかったですが、みなさんのご協力をいただき無事シーズンを終えることができた。全国ゴルフファンのみなさま。今年1年、本当にありがとうございました…!!」。
最初はちょっぴり恨み節で始めたスピーチも、最後は目いっぱいの感謝で締めた。

6季ぶりに日本ツアーに復帰した今季。26歳が、史上最年少の重責を背負った。
「自分たち選手には、何ができるか。考えるだけではなく実際に行動に移したり、作ったりするプロセスが、実は一番大変なんだ、と」。経験して初めて知る、歴任者の苦労。
自ら発案したピンフラッグの販売も、まずは主催者のみなさんから、各大会のロゴの使用許諾など、理解を求めて歩くことから始めなければならなかった。
国内開幕戦から無事、販売にはこぎつけたが「僕の中では間に合ったということが奇跡だった」という。

今年、初めて実施に踏み切った予選落ちした選手による“土曜日プロアマ”や、ジュニアクリニックなど。アイディアは次々と浮かぶが「実際に、それを口に出すのは勇気がいるし、皆さんにも納得してもらわなければならない。じゃあ、こうなったらどうなんですかと聞かれて、考えきれていなかったり。いざ自分のこの立場でただの夢物語りでは、ダメなんだ、と」。
打ち合わせや状況説明に、奔走した。

6月には一泊二日の過密スケジュールで東北三県に、福祉車両を寄贈。
同月、プロアマ戦での一連の騒動では謝罪会見に追い込まれた。
9月には、熱中症と胃腸炎を併発して戦線離脱も味わった。

練習量は削られ、後半戦以降は予選落ちが目立つようになった。それでも「24時間ずっと、選手会の仕事をしているわけではない。質をあげれば問題ない」と、気丈に言い続けた。

毎日ピンフラッグに、率先してサインをした。
おかげさまで、この1年の売り上げは8000枚を超えた。
「今までサインを求められたことがなかった選手が、サインを頼まれた、と喜んでいたという話も聞いたり。うれしかった」。
シーズン終盤には各大会の売り上げ表も入手し、来季のマーケティングも始めた。
「ピンフラッグも、売れる試合と売れない試合があったり傾向を見ると、すごく興味深い数字もある。今年初めていろいろ経験させてもらって来年は、反省や改善点を考えての2年目。すごくやりがいがある」。

今年、二足のわらじを履いて、痛感したことがある。
「求められているのは世界最高峰のもの。ヒデキが戻ってくれば当然、ギャラリー数は増える」。
動員数増に同学年のライバルにも感謝しつつ「ヒデキに頼るだけじゃなくて、もちろん自分も含めて世界のトップクラスでやれる選手をもっと増やしていかなければならない」。
その思いは米ツアー覇者の小平が、このシーズン最終戦で劇的Vを飾ったことで、確信に変わった。
初V者が13人も出た今季。26歳の今平が賞金王に輝いた。
「僕の後輩たちも、どんどん力をつけて、少しずつ活性化しているとは思うが、そこからさらに、世界で通用する選手がもっと出てくれれば。これから世界のコースで周吾もどういう戦いを見せてくれるかにも興味がある」。
そして自身も、引き続き来季2期目の選手会長職に邁進しながら、再渡米のチャンスを伺うのはもちろんだ。

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