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三井住友VISA太平洋マスターズ 2018

和製ケプカ!! 額賀辰徳が初勝利

パパ、つよ〜〜〜い!!
今季13人目の初V者は、プロ13年目の34歳。誰もが羨む飛ばし屋が、やっと悲願のタイトルを手にしてポカンとした。「これまで何度もチャンスがあって、その都度これかな、あれかなとやって打ちのめされて。今まで色々やって全然ダメで」。
そのわりに、その瞬間は、あっけなく訪れた。
「今日は順位も、何も見ずにやって。これを入れたらかなりいいところに行くなという感触はあったがまさか、あれで優勝とは」。
18番で沈めた2メートルのバーディが結果、ウィニングパットになった。
先に通算9アンダーにして、スコア提出所に入って気づいたら、逆転していた。
2つ後ろの最終組の秋吉が上がりのボギー、ダボでスコアを落としてあっさりと、初優勝は決まった。
「いつもは緊張して大事なパットを外したり、OBを打ったりする」。
だがこの日は最後まで、淡々とやれた。
「なんなんですかね、今日は肝が据わった。そこに自分で一番びっくりしている」。

54ホールの短縮が決まった最終日の第3ラウンドは、3差の3位タイから出た。
3番で、30ヤードのアプローチを直接沈めてイーグルを奪って大接戦のV争いを始めた。
難易度1位の6番パー4(510ヤード)では5Iで右3メートルにつけて、この日唯一のバーディを奪った。
300ヤードに設定された15番のパー4は、「自分の持ち味を、信じて打った」とスプーンで軽々と、ワンオン2パットのバーディとした。

ドライビングディスタンスで4度の1位に谷口徹は額賀を「日本のケプカ」と呼んだ。
だが11年と16年には、2度目のシード陥落をしたまま「お前は飛ぶだけや」と、イジられたりした。
「このままゴルフを続けていても、優勝だったり、そういうステージに、上がっていけないのかな」。
学生時代からこだわり、磨きに磨きをかけたせっかくの飛距離も生かせず「果たして持ち味なのか。むしろ足を引っ張ってるんじゃないのか」。
葛藤すらあった。
ランキング表をながめて「飛ばし屋は、そんなに上位にいない。飛ばし屋にゴルフは難しいんじゃないか。自分の下手を、飛距離のせいにしていたこともあった」という。

「練習で出来て、本番で出来ないのってなんだろう?」。
アニキ分と慕う優作に「呼吸が浅い」と指摘を受けたのは、決勝2日間を優作と回ってV争いした2015年のダンロップフェニックスだ。
最後に崩れた額賀。
勝ちきった優作には、プレー中の深呼吸を勧められた。
「じゃあ練習で、出来ている時のメンタルってどんな気持ち?」と考えてみた。
「・・・てきとう?」。
浮かんだ言葉だけを聞けば「ふざけてやっているようで、嫌な感じ。でも、ほら漢字にしたら、“その場その場に適したことをやる”という。凄くいいので。それを胸に、やったのが今週は一番」。
良いほうに解釈した「適当」を、ひょうひょうとやりきった。

火曜日の練習日には、松山英樹と練習ラウンドを回って「ヒデキとちょっと、話したりして」。いま取り組むべき課題を整理。
試行錯誤が行き過ぎて、かえってスイングを崩していたことが分かって、立て直しをはかることが出来た。
「今までは、あまり良いイメージがなかった」という御殿場。
松山が、監修に加わり生まれ変わった。改修が済んだばかりの新生コースは「僕にはドライバーで、バチンと打っていけるホールが増えたしロケーションも、こういう感じで打ってこいよ、と。その通りに打っていくことが出来た。ヒデキに感謝しないといけません」。
若き監修者に初Vで報いた。
「今は、ドライバーがフェアウェイに行く回数も増えて武器になっているなと思える」。
自信を取り戻した飛ばし屋が、ようやく本領を発揮した。

推薦を頂いて出場した今大会前の賞金ランキングはシード権が発生する65位にもほど遠い92位。
次週は、このまま開催地の地元静岡・三島駅から新幹線を乗り継ぎ岡山県で、QTサードに出る予定だった。
「・・・思い出しましたよ。ホテル、キャンセルしなくちゃ!!」。
当日の取り消しは、キャンセル料がかかってしまうが主催者のご厚意により、全額支給のV賞金4000万円(加算は75%)があるからへっちゃら。
もう来季の出場権を探して奔走しなくて済む。
「自分はQT行ったりっていうのを何回も、経験している選手の一人でもありますけど、“シード獲れるといいな”というところでまさかの優勝。これで、モヤモヤが晴れた。すべて心配がなくなった。それが一番大きいですね」。

涙もない、歓喜のガッツポーズもない。
ごくあっさりした初Vシーンもアトムが浴びせた水シャワーと駆けつけた愛息の祝福で、たちまちにぎやかなものとなった。
8歳の長男・智也くん、もうすぐスナッグゴルフを始めるそうだ。
3歳の次男・大雅くんはこの日、39度の発熱でも応援して盛り上げてくれた。
08年に結婚した友美夫人は中央学院大ゴルフ部で、互いに男女の主将をつとめた仲良し同級生。
育児がひと段落した今年は9年ぶりに、またゴルフを始めたそうだ。
もう、一人でどこにも寄り道しなくていい。愛しい家族と一緒に我が家に帰れる。賑やかで、至福の帰路となった。
  • 優勝が決まるまで、ずっとスコア提出所の前で待ち構えていたアトムこと重永亜斗夢。「先輩、かけていいっすか」律儀に確認
  • つめたっっ。最終日の御殿場は珍しく、ぽかぽか陽気もさすがに水浴びは寒い
  • パパばんざーいい

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