SMBCシンガポールオープン 2016

稲森佑貴は「ホテル代を稼ぐ!」

雷雲は、帰りを急ぐ稲森を追いかけるように迫ってきた。「そろそろ来るな、と思っていた」と、第2ラウンドの最終ホールの9番は、少し急ぎ足で回ってきた。稲森のホールアウトと同時に降り出した雨脚は強く、しばらくして案の定、競技中断のサイレンが鳴った。

もう、サスペンデッドは懲り懲りだ。前日初日。午後の最終組で回っていた稲森は、誰よりも多い7ホールを残した。この日は早朝4時50分に目覚ましをセットして、「7時30分からずっとゴルフをしている」。

続く第2ラウンドもほとんど休む間もなくコースに出て、長い1日。まだ若い稲森も終盤は、疲れきって「今日は絶対に終わらせよう、と」。2ラウンドは落雷のため、15時6分にまた競技が止まったまま、17時16分に2日連続のサスペンデッドが決まったから、この日のうちにホールアウト出来たことは、幸いだった。

それにしても、一度は通算5アンダーまでスコアを伸ばしただけに、第2ラウンドは後半の失速が残念だった。「ティショットがつかまり過ぎて、今日は風に勝つくらい左に曲げているときもあった」と、5番と6番では、同様のミスが立て続いて「ダボ、ボギー。今日の失敗を明日につなげる」と、自身初の海外試合でも逞しい。

シンガポールも初めてだ。「右も左も分からない」。慣れない環境に右往左往も「今週は、車ではないですよ」って、分かってますよ!
国内では、キャンピングカーでの転戦も、第1シード入りを果たした今年は新車を用意したとはいっても、まさかここまで乗って来れられない。
代わりに今週は、豪華なホテル住まい。コース近くのオフィシャルホテル「シャングリラ・ラサ・セントーサ」は間違いなく、稲森史上「最高クラス」。21歳の若き倹約家は、「考えたくない!」と、けっしてお安くないホテル代に気をもむよりも、「その分、稼いで帰りたい」と、今週はそれも大きなモチベーションのひとつだ。

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