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ANAオープン 2016

石川遼が“54”をマーク

「まだプロアマ戦ですよ」と、本人はいたってクールに答えたつもりでも、その顔はちょっぴりニヤけていた。本戦の開幕目前に、連覇を狙うホストプロとして、まずは大きな努めを果たせたことが、石川には嬉しい。

「今日は神懸かっていた」と言った。「18ホール連続バーディなんて、初めてですね」と、目を丸くした。

この日のプロアマ戦はスクランブル方式のチーム戦。
ティショットは、プロを含めて4人全員が順番に打ち、2打目以降はプロを含めた4人のうち、最も良い位置のボールを選び、そこから4人全員がプレースしてまた順番に打っていくゲーム方式で、「今日はたまたま良かった」と、ことごとく石川がピンそばのチャンスにつけて、スタートの1番からことごとくバーディが続いて、チーム内では次第に妙な緊張感が高まっていった。

「みなさん、これは絶対に外せないというような。アマチュアのみなさんも、皆プロゴルファーみたいな心境になっていた。緊張感がハンパなかった。僕もとても緊張した」と、他のお三方が外しても、「僕は絶対に入れる、と。それがことごとく入ってくれた」とチームの興奮が、最高潮に達したのは後半の17番のパー5だ。

3打目はアマチュアの方が、ピンまで170ヤードを残したほうを採択するか。はたまた石川が打った、木越えの残り60ヤードを選ぶか。
「60ヤードを選びましょう」と、チームで一致した。
その3打目を、石川はグリーンに乗せられなかった。
グリーンの左奥に打った、竹田恆和・日本オリンピック委員会会長の4打目が採択された。
「これは、絶対に入れなければいけない」。責任重大の渾身の1打・・・!!
なんと石川のチップインバーディで“大記録”につながった。最後もやっぱりピンそばのバーディで、18アンダーの54ストロークは“2位”と4打差のぶっちぎりVで、主催者を大喜びさせた。

チームの“快進撃”の最中に、ANAの篠辺修・代表取締役社長が早々に“V宣言”。「優勝しましょう!」との呼びかけに、ホストプロとして、最高の形で貢献できた。今季はじめに主催者をも心配させた腰痛の後遺症も、みじんも見せない元気な姿。
「今まで経験してきた中で、最高のプロアマになりました!」。

本戦前に開催されるプロアマ戦について、石川には強いこだわりがある。「プロアマ戦は大会を開催してくださるみなさんを、おもてなしする場所。プロアマ戦が、練習ラウンドになっている選手も多いと思うがそれは、ちょっとはき違えていると思う」。

大会前日のラウンドということで、一緒に回るアマチュアの方々のほうから「こちらはこちらでやっておくから。プロはどうぞ練習をして」と、親切に言って下さる方もいる。
米ツアーのプロアマ戦でも、そんなお言葉に甘える選手がほとんとだそうだが、石川はそれにも異を唱える。
この日のプロアマ戦では、お客さまとのコミュニケーションを図る意味でも、13ホールでプロと同じティーインググラウンドを使ったが「待ち時間にも会話が増えるし、これは凄く良いことだと思う」とこの取り組みにも大歓迎の石川は、チームのみなさんから「プロはどうぞバックティから練習して」と勧められて「ありがとうございます」と丁重に礼を言いつつ、やんわりと手を振った。常にみなさんと、揃って同じティグラウンドに上がった。

「スポンサーのみなさんと、楽しく会話出来ないとプロじゃない。同じ組で回っているのに、まるで別の組で回っているような。そんなプロアマは、プロアマじゃない」。
この日ばかりは翌日からの、自分の準備はひとまずさておき、とことんおもてなしに徹する。それが石川流のプロアマの過ごし方。

「とにかく良い雰囲気の中で、どうやって楽しんでいただくか。そこにスコアがついてくれば、それが一番。今日は本当にベストなおもてなしが出来た」と本戦を目前に、大満足な1日。
「でも前の日に、こんなに上手くいっちゃって、いいのかな・・・?」。いいんです! それこそ、連覇に向けて吉兆です!!

「明日からはもっと頑張って」と、チームのみなさんに送り出された。「その期待にも、応えたいです」。
大会3日目の17日土曜日に、誕生日を迎える。今年もホストプロが、最高のバースデーウィークを演出する。

  • 4人で力を合わせて出した「54」手書きの“垂れ幕(?)”で、ささやかなお祝い

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