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日本プロゴルフ選手権大会 日清カップヌードル杯 2014

今季ツアー初参戦、大田和圭介が首位タイに

最初にことわっておくが「大和田(おおわだ)」ではない。「ちゃんと漢字を見ながら、大和田獏さんと同じ名字と勘違いされる方もいらっしゃいますので」。まずは読み仮名をふっておこう。「おおたわ・けいすけ」。プロ5年目の25歳。あだ名は「タワ」。時々「タワワ」や「タワタワ」とも。

午後スタートのこの日はすでに、午後スタートのベテランたちが上位にひしめく中で、「僕は技術も精神力もまだまだ。とにかく攻める気持ちを忘れずに、1打1打を一生懸命やるだけ」と、難コースにもひるまずに、最後はあがりの連続バーディで、首位タイに踊り出た。

出場優先順位を決める昨年のファイナルQTは、予選落ち。今季のツアーの出場権はなく、今年5月に行われた大会独自の予選会で20位に入り、今季ツアー初出場を果たしたこのプロ日本一決定戦。「明日は緊張するとは思いますが、これを味わうために頑張っていますので」。

いつも丁寧な言葉遣いと、年齢にはそぐわぬ落ち着いた風情があるが、日大2年の日本オープンでローアマ。3年時には、日本学生連覇。大きなタイトルをひっさげて、卒業と同時の2010年にプロ転向を果たした際には、その生真面目さがどこか、足かせになっていた部分もあった。

ゴルフの手ほどきを受けた父親の勇さんを亡くしたのもその頃。勇さんが切り盛りしていた中華料理店もたたむしかなくなり「母と妹と。僕が養っていかなくてはいけない」と、当時は責任感で一杯だった。
「あのときは、自分にプレッシャーをかけすぎていたように思います」。

どこか思い詰めたような表情で、ゴルフをすることも多かった。「日に日に大きくなる父の存在。とても僕は父親のようには出来ない」。もどかしさの中で気が付いた。
本当に家族が喜んでくれること。「僕が夢に向かって頑張っている姿。その中で僕が良い成績を残すこと」。

今日の首位獲りもきっと喜んでくれている。そう思うと、自然と自分も笑顔になる。「僕の成績を見て、家族が喜んでいる。その姿に僕もまた、支えられていたんだと」。それが理解できたとき、若くして父を亡くした逆境も「プラスに変えていけたらと、思えるようになった」と、大田和は言う。

ここにきて、ぐっと逞しさを増したプロ5年生。先週は、アマチュア時代にナショナルチームで共にしのぎを削った同世代の松山英樹が米ツアーで初優勝を飾った。「凄い」と驚嘆する反面、一抹の悔しさも。
「アメリカでの活躍は、僕の夢でもありますので」。米ツアー3勝をあげている丸山茂樹。「憧れです。僕もああいう選手になりたい」。今はまだ、日本ツアーの出場すらままならないが、「今は自分に出来ることをひとつひとつ頑張って、少しずつでも夢に向かっていきたい」。かけがえのない家族の声援を励みに、まずはプロ日本一を目指して一歩一歩、歩いていく。

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