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キヤノンオープン 2012

石川遼は「今日の色は、薄い赤」

この日のウェアは黒でも心の中は、チラチラと燃え始めた炎のような色をしていた。早朝から、強い風に「僕が経験した中では一番、難しい戸塚だった」と、前半のインコースはじっと耐えてイーブンパーで折り返した石川は、風が止んだとたんにエンジンを吹かした。

3番はティショットを右の林に打ち込むピンチも「10ヤードか15ヤードくらいスライスをかけて打った」という第2打は、「どんな時でもあのスイングが出来れば強くなれる」と確信した1打。残り105ヤードのアプローチウェッジは、木の上のわずかな隙間を抜いて1メートルのチャンスを奪った。

連続バーディから、さらに2つスコアを伸ばして最終9番もバーディ締めに、首位と2打差の4アンダーをマークした。

近頃は、初日に出遅れることが多くてそのせいで、最後は優勝争いにもあともう少し届かないという状況が続いていた。
「すべては気持ちの持ちようですね」と、自覚のある石川はその心境を、色に例えて「最近は初日にブルー系が多かったが、今日はあえて最終日に近い色でプレーをした」という。

デビューした当時は、見るもの経験するものが初めてのことばかりで、「すべてが新鮮。好奇心もあって、自ずとモチベーションが上がった」。
無理に強いなくても毎週のように、初日から心の中を燃えさかる赤色一色に染めて戦ったものだがプロ5年目ともなれば、むしろ「あの頃の自分は凄かったな」と、むしろ一歩引いて自分を見ている自分がいたりする。

「初日から最終日のような気持ちで戦えば、疲れが出てしまうし、今の自分は別人。あのころと、同じメンタルはもう一生持てない」と、冷静な視点もまたひとつ成長のあととも言えるが、一番新しい勝ち星からまもなく2年が過ぎようとしている今は、それが足かせになってしまう場合も。

「初日に冷静になりすぎてしまう」と、その点では反省材料に「今日は、最初は白色から始まって、最後は薄い赤色に」と力の配分も適度に、初日としては今季最高の4位タイにつけた。

この日の組み合わせは、公言しているライバル2人とのラウンドもまた、21歳の心に火を灯した。ブレンダン・ジョーンズと、特に金庚泰(キムキョンテ)とは、昨年の日本オープン以来、ほぼ1年ぶりとなる同組対決にも、高くモチベーションを保ってプレーが出来た。
「優勝争いするために、大事な日が続く」と、ツアー通算10勝目にむけて、ますます気持ちを上げていく。そして最終日こそ真っ赤に燃える。

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