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感動の復活劇…。細川和彦がシードに返り咲き

このカシオワールドオープンで、ツアー通算2勝目をあげたはたちの黄重坤(ハンジュンゴン)が、淡々としていたから余計にベテランの歓喜が際立った。

41歳の細川和彦が、2年ぶり16回目のシード復活を果たした。
「信じられない」と、本人も泣き崩れた。まさに奇跡の復活劇だった。

今年のボーダーラインの71位とは、わずか51万1195円差の賞金ランキングは69位で迎えた今週。
47位でどうにか予選通過を果たして、安堵したのもつかの間。

スコアボードを見たら、当落選上にいる選手たちが「みんな赤字で」。もともと圏内の選手も、圏外から大会を迎えた選手も、みな細川と同様に、この“最終戦”で最後の力を振り絞っていた。
細川も、少しでも油断をすれば、大会前の圏内もこの一戦で弾き出される可能性もあった。

今年は8月の「VanaH杯KBCオーガスタ」で3位につけて、足がかりを作ったとはいうものの、それから毎試合は、薄氷を踏む思いで「あのときのあのボギーが最後に響くんじゃないか」と、振り返っては、不安を振り払う日々。

それは、いよいよこの自身の最終戦でも同じで、決勝ラウンドに進んだとはいっても終始、追い込まれるような心境には、何の変わりもなかった。

そんな中で、 心の支えになったのは、一世一代の勝負の今週、バッグを担いでくれた水巻歌南さん。
もともと、予定していたキャディが開催前にインフルエンザにかかって、きゅうきょピンチヒッターを頼んだのだが、気配り目配りの効く36歳の女性キャディが特に、細川の精神的な支えとなった。

他の選手のスコアを気にして、速報ボードばかりに目をやる細川に「ダメです、自分のことに集中しましょう」。
無骨な男性キャディに言われたら、反発していたかもしれない。
水巻さんに笑顔で明るく言われたら、素直に「はい」と頷いていた。
「こんなピンチでも、とてもリズム良くクラブが振れています。当然ですよ。細川さんは8勝もしているんですから」。
水巻さんに言われたら、自然と自信も沸いてきた。

しかし、それにしても、よりによってこの週に、この今季最後の日に出るものだろうか。
インスタートの前半は、なんと13番から怒濤の6連続バーディだ。

「つけば入るし、ドライバーは真っ直ぐ行く。ありえないですよね」。
プレッシャーのかかる場面で、かえって「自分で何をやっているのか分からなくなった」というほど、何をやっても上手くいった。あとで振り返っても、あまりよく覚えていない。夢のような6ホールだった。

通算7アンダーの35位タイは、それでも半信半疑で上がってきた。
スコア提出所に設置されたコンピューターは、その時点の順位と獲得賞金を元に仮想の賞金ランキングをそれこそ1円単位まで、細かく正確に弾き出す。
それで確認した上で、細川の復活を確信したツアー関係者に「おめでとう」と心をこめて言われて、思いがけず涙があふれた。思わず机に突っ伏した。

こみ上げてきたものは、止まらない。
泣きながら、スコアカードを何度も何度もチェックした。
記入に間違いはないか。自分とマーカーのサインはあるか。何度も何度もチェックした上で、それでも安心出来ずに、また部屋の奥に戻るという行為を何度か繰り返したのちに、恐る恐る提出所と出口の境界線をまたいだ。

とめどなく流れる涙もそのままで、部屋から出てきた細川は「本当に信じられない」と繰り返した。「神様は見ていてくれた」と、嗚咽した。「優勝の次に、嬉しい」と、泣きじゃくった。

ファイナルQTはランク37位の資格で、出直しを誓った今年は難病の潰瘍性大腸炎に加えて、右膝の半月板を損傷してなおさら厳しいシーズンも、「言い訳にもならない。やるしかない」と、自らにムチ打った。

昨年は、茨城ゴルフ倶楽部と所属契約を結びながら、よりによってその年に、シード権を失ったことに、「迷惑ばっかりおかけして」。申し訳なさと共に、どん底の自分にも快く練習場所を提供して復活をサポートしてくださった恩に、感謝の思いがなおさら募る。

師匠の尾崎直道にも、今週は2日目に言われたばかりだった。
「お前がここまで戻って来られたのは、支えてくれた人たちのおかげだよ」。
本当にその通りだと細川も思うからこそ、余計に涙が止まらなかった。

※今年、賞金シードに返り咲いた選手は
38位 兼本貴司
43位 深堀圭一郎
48位 今野康晴
53位 塚田好宣
54位 李丞鎬(イスンホ)
55位 篠崎紀夫
56位 梁津萬 (リャンウェンチョン)
58位 貞方章男
65位 野仲茂
69位 細川和彦
70位 白潟英純

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