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日本オープンゴルフ選手権 2010

アマチュアの松山英樹くんが快進撃!!

まだ18歳のアマチュアに、一分の隙もなかった。9番こそ2打目、3打目とミスが続いたが、ボギーはこの最後の1ホールだけだった。

トッププロすら苦しむ難コースで2日連続の60台をマーク。初日に3アンダーで並んだ同級生の石川遼を、この日2日目はスコアでも、プレーでも凌駕した。

特にパッティングは、9月のパナソニックオープンのあと、ゴルフを始めてから「初めて1週間も、あえてパターを握らなかった」という荒療治が効いた。

いざ、先週の「アジアアマチュア選手権」ではすっかり元の調子に戻り、本当に面白いように、チャンスが決まったという。
同選手権の優勝者に与えられる来年のマスターズの出場権。アマチュアとして、初となるオーガスタへの切符を手に入れた勢いは、まだ続いていた。

15番でティショットをピタリとつけて、2日連続の鮮やかなワンオンバーディを決めた石川に「やっぱり凄い」とひそかに度肝を抜かれながらも次の16番で、13メートルもの長い距離を入れ返して、「スコアとパットでは、遼に勝てたかな」と、嬉しそうにはにかんだ。

「この2日間だけですけど。グリーン上だけですけど」と賞金王への敬意もぬかりなく、「でも、2日間だけでも勝てて嬉しい」と、無邪気に喜んだ。

中3以来となる石川との同組ラウンドにも、もはやこの日はプレッシャーもなかった。前夜は11時過ぎと、予定より1時間ほど遅い就寝となったが、緊張のためではない。
「たまたま見たテレビドラマが面白すぎて」と、ちょっぴり夜更かし。
そして、朝は寝坊の強心臓ぶり。

携帯電話で4時にセットした目覚ましは、うっかりマナーモードにしたままだった。5時過ぎに、東北福祉大の阿部靖彦・監督の電話でようやく目を覚まして慌てた。
5分でシャワーを浴び、服を着替えて出てきた。
「俺を待たせるなんて、池田勇太以来」と、苦笑いの阿部監督。
「僕、けっこう寝坊するんです」と、本人は照笑い。

ラウンド中も、バッグを担ぐチームメイトの岡部大将さんと、「くだらない話」でほどよく息を抜き、ときおり笑顔も見せながら、「まるで部活みたい」と、リラックスそのもの。
大ギャラリーも、トッププロとのラウンドも、「遠慮はあるけど、試合が始まったら関係ない」と堂々と渡り合い、携帯電話の着信音にも、何度か仕切り直しを余儀なくされたが、「それほど気になったわけでもなく。そのほかの話し声は、まったく気にならなかった」という大物ぶりだ。

1927年の第1回大会を制した赤星六郎氏以来、大会史上2人目のアマチャンピオンの予感すら漂わせる18歳。
当初の目標だった予選通過を果たしたら「明日からは目標は設定しない。1打1打、真剣にやってどこまで自分が上に行けるか」と、未知の世界に胸も躍る。

松山英樹(まつやまでひでき)
1992年2月25日生まれの18歳。愛媛県松山市出身。4歳のとき、ハンディ1の父・幹男さんの手ほどきでゴルフを始める。地元・雄新中学は2年生から、明徳義塾中学に“ゴルフ留学”。同高校在学時の2008年に四国アマ、同年の全国高校ゴルフ選手権で優勝を飾る。
2009年には日本ジュニアを制覇。同年の日本アマで、ベスト4以上ならプロに、と本人は考えていたが、あえなく予選落ち。「このままでは通用しない」と、名門・東北福祉大へ。180センチ、体重75キロ。ちなみに、好きな女優は「広末涼子さん」だそうで、このほどの結婚報道には「ちょっと
ショック・・・」。

  • 前半の18番では、右に曲げたボールがギャラリーに当たる、本人には初のハプニング。「心配しましたけれど、大丈夫だと言っていただいて」。あとに引きずることもなかった

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