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Shinhan Donghae Open 2025

22年に5差逆転⇒試練と成長を問われた1差の辛勝。比嘉一貴がここからまた伝説を作る

比嘉一貴(ひが・かずき)が日本開催の22年に続く大会2勝目を、韓国開催で飾った。




過去7勝の中でも「同一試合で2回勝つのは初めて。嬉しいですね」と、喜んだが、2度目の勝利は5打差逆転の前回とは真逆の展開になった。

1差のトップで出て、1番から4連続バーディを奪い、一時は4打差つけたが、「今日はピン位置も難しく、いいショットがいい結果にならない」。
徐々に貯金を失い最後は1差の辛勝になった。

試練を問われた2勝目にもなった。

13番のパー3で、グリーンの左に外してこの日唯一のボギーを叩いた。

比嘉に1差と迫ったカナダのRTリーは、地元韓国の出身だ。
リーの好プレーにひときわ大きな歓声が上がる中、特に接戦となった後半は、極力平常心でプレー。



1打リードで入った18番パー5では、リーがティショットを右の池に入れ、その裁定にかなりの時間を要したが、最後はグリーンの外から渾身のパーセーブを決めてきた。
観客がますます歓喜する中、比嘉も同様の場所から第4打を寄せる窮地だったが、「自分も入れるつもりで」と、4オン1パット。
1差で振り切りJGTO選手たちの盛大な水シャワーで喜びに浸った。



大会2度目のV会見でも韓国メディアから指摘があったとおり、前回優勝時より、明らかに飛距離が伸びた。

「当時、日本でプレーしていたときは、あまり飛距離の必要性は感じていませんでした」。
だが23年に、賞金王の資格で参戦した欧州・DPワールドツアーでは「勝負できないことが分かった」と、打ちのめされ撤退。

日本に戻って飛距離アップに取り組んだが、「ゴルフのバランスが崩れた時期もあり、自分は何がやりたいのか」。
悩み、成果に恵まれなくてもあきらめなかった。

ますます鍛え、道具を吟味し、今季ついに平均12ヤードの飛距離アップを実現させた。
「去年もリー選手と回ったことがありましたが、1回もドライバーで追いつくことなんかなかった。今回、その差が縮まったことには成長を感じた」。

全長7471ヤードのジャック・ニクラウスゴルフクラブコリアは、一昨年の欧州「韓国選手権」でもプレーし、予選を敗退していた。
「あの時は4月で、気候も風向きも違うんですけど、パー5で2オンを狙う選択も厳しかった。コースをもっと難しく感じていたが、今回はマネジメントの幅も広がりましたし飛距離アップが非常に優位に働いたと感じています」。

数々の試練を乗り越え、1差の辛勝がもたらした確信と自信は、あまりにも大きかった。



8月の「ISPS HANDA 夏に爆発どれだけバーディー取れるんだトーナメント」に続く今季2勝目で、賞金ランクは前週の15位から、一気に2位浮上。

3年ぶり2度目の賞金王も視野に入れ、目標としていたPGAツアーへの挑戦にも一歩また大きく近づいた。

今週は、2年前の欧州・DPワールドツアーで苦楽を共にした神田キャディと再びタッグを組んでの“初V”だった。
「僕のわがままについてきてくれた神田さんにはすごいお世話になったし迷惑もかけたが、ひとつ大きなきっかけになったんじゃないか」。



初タッグの地も、実はここ。
「23年の、このコースから始まったんです。またここに戻ってきて2人で優勝できたのも嬉しいですね」と、感慨深い。

3年前の日本開催では5打差の大逆転で、賞金王への礎(いしずえ)を築いた。
身長158センチは、史上最も小さなキングと言われた。
今度は韓国での大会2勝目で、再び新たな伝説を紡いでいく。


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