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三井住友VISA太平洋マスターズ 2022

中西直人が初の首位発進「悩めるって幸せ」逆境すら笑いに変える

逆境すら笑いに変える。
この男に“ポジティブ”をやらせたら、ツアーで右に出るものはない。


プロ13年目の中西直人(なかにし・なおと)が1イーグル、6バーディ、2ボギーの「64」を記録。
自身初の単独首位は、今大会の50周年記念に取っておいたような好発進である。


「何年か前にコースを大幅に改造されてから、ドライバーイズマネーのセッティングに変わって18番も僕の飛距離では、左林を超えれない」と、無理を承知で「限界を超えれるような振りがしたいな」と、前半最後のパー5の左林に向かって1Wを強振。


狙い通りに左バンカー付近から、2打目をグリーン手前に置いて、3打目はなんとチップイン。

「イーグル獲りのご褒美に」とホール間でマネージャーから受け取った缶コーヒーを、勢い余ってこぼしてしまった。

「気分も上がっているんで歩きながら行っちゃいました」と胸元に、痛恨の茶色い染みも、「おかげでゆっくり歩こ、と。逆に落ち着けました。これもコーヒーの功名ですね」と、外野でのミスも後半9ホールの教訓に。


本当は、マイブランド「サンライズ」の特注ウェアも今大会のテーマカラーに合わせて濃い緑に統一するはずが、コロナの影響で完成が間に合わなかったという。

「せめて緑つながりで」と黄緑の蛍光色を選んで着たら、なんと図らずも、三井住友カードのゆるキャラ「ビバすけくん」と、お揃いに。プレー後に、富士山をバックにした絶景のフォトエリアに並んで立つと思いのほか映えて、待ち構えたファンも大喜びだった。



今季は、「ISPS HANDA 欧州・日本、とりあえず今年は日本トーナメント!」の10位が最高で、予選敗退が実に11回。
現在賞金ランキングもまだ90番台。

「このままではいけない」と、今までと「すべて真逆」を行く大幅なスイング改造に踏み切ったのは、試合の出場資格がなかった先月の3週間だ。


本来の植村啓太コーチに加えて、ベテランの堀尾研仁コーチを頼るダブルキャストでまず、原因を突き詰めたところ、「インサイドアウトで、フェース開いて、ハンドファーストだったら右にしか飛ばない。これをスクエアに近づけるにはどうするか?」。

試行錯誤の末に、「超ハンドレートにして打ったらやっとまっすぐ飛んで、フェースに乗る乗る~」と、一気に光が差してきた。


「僕は本当に人に恵まれてやれている」と今週は、植村コーチにキャディをしてもらって、手応えをますます加速させる作戦もハマって「いろいろ悩んできたけど、だからいろいろ勉強できたし、悩めるって幸せ」と、スランプすら糧にする。


「プロゴルファーにとっては試合が発表会みたいなもの。いい発表ができたかな」と成果を喜び、「これだけ大幅なスイング改造してギャラリーの方がいなかったら逆に寂しい。すべてにおいて感謝しかない」。


この日の4170人は、初日としては今季最多の動員数を記録。
50回を記念して、4日間とも観戦無料に踏み切ってくださった主催者さんへの思いも増した。


「今年は、ほんとに球が目線にない。一生懸命練習しても、打った瞬間ドライバーが右に70度行く」と、どれだけゴルフが不振でも、選手会副会長の肩書きを背負って常に笑顔でファンの前に立ってきた。

「しんどいときはしんどい言うし、辛かったら辛い、怖かったら怖いと全部共有している」と、どんなに弱音を吐いても見放さずに応援してくださった“直人ファン”。

「みなさんのおかげで今がある」と感謝し、「きょうは凄く喜んでくださっているんじゃないか…」。
今回は来られない遠方の方々の顔も一人一人思い浮かべて、今まで苦しかった分、初日の好発進も喜び倍増だ。

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