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松山英樹「グリーンジャケットを、日本に持って帰れることが嬉しい」

18番の2打目が、ガードバンカーにつかまった。
それまで極力、笑顔を保ってきた日本人最初のメジャー勝者は、この日初めて悔しそうに、ちょっぴり顔をゆがめた。
「最後はハラハラドキドキさせてしまった。2打差あってよかったな、と思いながら上がってきました」。
苦笑いの逃げ切りVも、大学後輩の早藤将太キャディと組んで初めての勝利はとてつもなくビッグなタイトル。
「ザンダー(・シャウフェレ)とハグをして、将太と抱き合って、やっと優勝することができたという気持ちになりました」。
喜びのガッツポーズをやっと見せたのは、Vセレモニーのとき。
世界1位の昨年覇者、ダスティン・ジョンソンに着せ掛けられたグリーンジャケットは、この日のコーディネイトに思いのほかしっくりと馴染んだ。
大事な勝負の日に割と好んで選ぶのは、黄色を基調にしたウェア。
「特に、考えてなかったですけど、終わってみてそういう風になったので、良かったなと思います」と、照れ笑いで話した。
シャイで口下手なVスピーチは「この素晴らしいオーガスタナショナルで、ここに立てることをうれしく思っています。多くのファンの皆さま、オーガスタナショナルのメンバーの皆さまありがとうございました」と、コンパクトに括ると「サンキュー!!」。
最後に、ここ一番の声を張った一語にありたっけの謝意を込めた。
とてつもない重圧を乗り越え、日本勢初の快挙をやりとげた。
2位に4差で出たこの日は、1番の第1打がいきなり右の林に飛んだ。2打目は出すだけのショットとなり3打目も寄らず、出だしのボギーで2位との差は一気に1打に縮んだ。
すぐ2番のパー5で獲り返せたのは良かったが、オーガスタで初めて迎えた最終日最終組。
「1番ホールのティーグラウンドに立った時、最終組でトップでいることを考えたら、すごいナーバスになってきました。でも、3日目終わってトップにいるのは自分だし、最後の18ホールをしっかりとやり遂げようと」。
フェアウェイからの2打目がグリーン奥まで飛んだ3番、ティショットをバンカーに入れた5番は約5メートルのパーパットもしのいだ。
6番、7番では立て続けに好機を逃しても、苛立つ素振りはいっさい見せなかった。
8番、9番の連続バーディで5打差をつけて、サンデーバックナインに入ると前半、好調だったショットが乱れ始めた。
13番パー5はラフからのアプローチをピンそばに寄せて、ピンチをチャンスに変えたが1、2打目共にミス。
後続を引き離しにかかるつもりの15番パー5では、2オン狙いの2打目が奥の池にはまって「裏目に」。
続く16番もボギーとし「朝からずっと緊張していて、最後まで緊張しっぱなしで終わりました」。
オーガスタの夕陽が、安堵の笑顔を優しく照らした。
これで、最新の世界ランクは前週の25位から14位に浮上。自己最高は2017年に更新した2位。再び、世界1位の夢も見えてきた。
「僕がここで勝ったことで、今まで日本人にはできないと言われていたことを、くつがえすことができた。今テレビを見ている子たちが5年後、10年後にこの舞台に立って、その子たちとトップで争うことができたらすごく幸せ。そのために僕もまだまだ勝っていかないといけない。頑張っていきたいと思います」。
初出場は、震災直後の2011年。まだ、東北福祉大の2年生だった。
「あの時、背中を押してくださったみなさんに、またよい報告ができることがとても嬉しい」と、言った。
あれから、10年の節目に故郷に初のメジャータイトルをもたらした。
「このグリーンジャケットを、日本に持って帰れることが嬉しいです」と、微笑んだ松山選手。
優勝、おめでとうございます。そして、私たちみんなの夢をかなえてくれて、本当にありがとうございます。
凱旋帰国を、楽しみに待っています。
※当初、ウィニングパットがパーパットの距離になっていました。申し訳ありませんでした!














