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ゴルフ日本シリーズJTカップ 2016

99年度の覇者が、帰ってきた! 

競技委員の藤﨑茂夫(右)と大雨の中、コースチェック
初日から、選手や関係者の間でこんな声が聞かれた。「いつものシリーズと、スコアの伸び方が違う」。

この日首位の5アンダーは、数字で見れば例年の出だしとさほど変化はなくても鋭い選手たちは、例年と微妙に違うシリーズに、気がついていた。

1打差の3位タイにつけた藤本佳則は、「例年と若干ずれたところに切ってあり、今年はセンターに切ってあるから、簡単かと思えば、こんなところに傾斜があったのか、と。嫌らしいピン位置ですね」。
それこそ、「僕が狙っていたとおり」と、早速初日から、思惑がはまったような気がして、細川和彦には嬉しかった。

ツアー通算8勝。99年の今大会の覇者。11年ぶりに戻ってきたこの最強選手決定戦は、コースセッティングアドバイザーという肩書きで帰還した。

2012年以来のシード復活を今もまだ、諦めてはいないが“新境地”にも、目覚めつつある。今年は新政権誕生のもと、渡辺司や田中秀道、桑原克典や佐藤信人、田島創志らがツアーの優勝経験を生かして、JGTOのトーナメント運営委員会に帰属してコースセッティングに携わるようになったが、細川が新会長から打診を受けたのは、今年の6月。

青木功に「一緒にやってくれないか」と、誘われた。
「お世話になってきたゴルフ界で、何か返せるものがあるなら」と、ふたつ返事で引き受けた。
9月のフジサンケイクラシックに続く、2度目の担当トーナメントが今季の最終戦ということで、前回とはまた違った趣旨で取り組む。

「まず、今週の最終戦は予選落ちがない。いわば今年1年一番頑張った人たちのお祭りで、その人たちの実力を存分に引き出すセッティングで、楽しんでいただきたい。ゴルフの楽しさと醍醐味を感じていただけるような展開を見ていただきたい」と、練習日から練りに練ってきた。

この日も朝6時半に競技委員らと宿を出て、まだ暗いうちからコースをくまなく見てあるいた。
選手がスタートしたあとは、休む間もなくその後を追いかけて、翌日に備えてアウトコースを見て回り、全選手がハーフターンした午後から、またインコースを回った。

「4日間のピン位置は、今日でほぼ決めた」という。
「あとは、風や天候、グリーンの速さを見て微調整していく」という。
戦う側から、支える側に回ったことで、「ロープの外から見て初めてわかることもある」と、新たなゴルフの魅力やコースセッティングの奥深さにも目覚めつつある。

とりわけ、東京よみうりの18番グリーンは、大会を支える側から見直しても、改めて背筋が震える。
選手たちには冗談で、「あそこだけは、4日間とも真ん中にピンを切るよ」と言ったが、「あそこは4日間、同じ位置に切ってあっても難しい」。大会を支える側に回っても、悩ましいホールである。
「最後のクライマックスホール。やっている人も、見ている人も、みんなで最後にわーっと沸くような。そういうピン位置を見せられたら」と細川も、自らピンを切ったグリーンで、勝者と賞金王が誕生する瞬間を、楽しみにしている。

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