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長嶋茂雄 INVITATIONAL セガサミーカップゴルフトーナメント 2009

宮本勝昌は兄弟子の優勝に

勝った藤田が、複雑な心境を明かした。「こいつにだけは絶対に負けたくない、と思う。時には、バーディパットを外せ、とか内心、本気で思ったりすることもある。宮本は、僕にとって一番のライバルであり、一方でその活躍が一番嬉しい相手でもあり・・・」。

この日最終組の一つ前で回った宮本は藤田にとって、お互いに芹澤信雄を師匠と慕い、芹澤のもとで切磋琢磨を続けてきた弟弟子でもある。

宮本が、4年ぶりのツアー通算6勝目をあげた一昨年のKBCオーガスタでも、終始笑顔の本人になり変わり、泣いて喜んだのが藤田だった。

この日も藤田の目標は、首位でスタートした井戸木ではなく、目の前の宮本だった。
「とにかく、宮本をターゲットに彼について行こうと。ついて行くから、絶対に落ちてこないで、と。後ろから、自分が宮本を押す形で一緒に伸ばして行こうと考えた」という。

果たして、前半4バーディでスコアを伸ばした宮本に、藤田も引っ張られる形でバック9に突入した。
しかし、宮本はとうとう後半に、かねてより調子が悪いといっていたショットのほころびが出始めた。
11番で池。そして、いよいよクライマックスの16番パー3でティショットをまた池に入れて一歩、後退した。

逆に、やはり当初から調子が悪いと訴えていた藤田は終盤につれて、ますますアイアンショットが切れはじめ、このホールでバーディを奪い、宮本のかわってこの日初めて首位に躍り出た。

藤田は、「宮本が、ここまで自分を連れてきてくれたような気がした」と感謝する。
宮本に1打リードで迎えた18番も、左のバンカーからバーディチャンスに寄せたのを見て気合いが入ったという。
手前から2.5メートルのバーディパットは、「絶対に、あいつとプレーオフにはなりたくない」と思って打ったという。

「あいつは絶対に入れてくる」と藤田が踏んだ宮本のバーディパットは結局、縁をくるりと回ってカップに弾かれた。

2人、同スコアで並んだ前日3日目に「お互いにもっと調子の良いときにやりたかった」と話した兄弟弟子の同組対決。

わざわざ会場に応援に駆けつけた芹澤の前で繰り広げられたバトルは兄弟子に軍配が上がった。
藤田は「自分が良いプレーをして宮本を振りきったというよりも、宮本がミスをした感が強い」と残念がったが、宮本は「良いプレー、良いショットをしている人が一人抜けて、勝つべき人が勝ったということでしょう。藤田さんは、本当に良いプレーをした」と賛辞を送った。
「僕も、今の状態で考えると最高の結果です。ここまでやれたのも、藤田さんのおかげです」と、感謝した。
今度は祝福する側に回り、その首にむしゃぶりついて無邪気に兄弟子のツアー通算7勝目を喜んでいた。

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