２００７年大会のチャンピオンが、複雑な胸の内を明かした。「ボギーを打っても悔しくないし、バーディを獲っても嬉しくない。こんなの、初めてで…。そんな自分との戦いがつらいんです」。

９番では第２打をまさかのミスショット。「めちゃくちゃチョロした」と、その場にうずくまり、頭を抱え、苦笑する様子も以前の片山には見られなかった光景だった。

４番の３パットも、10番からの３連続バーディも、同じようにどこか淡々としていて、今の片山にはどれもモチベーションを上げる材料にはなりえない。

昨年の日本オープンで、悲願のツアー通算25勝を達成した。史上７人目の永久シード入りを果たし、さらに今年４月には自身８度目のマスターズで２打差の単独４位は日本人として、もっとも優勝に近づいた。

何かひとつ達成するたびに、またすぐに次の目標を掲げ、走り続けてきたこのプロ15年間だった。
だが「この半年間で２度も大きなことが起きて……」。

その２つの大きな出来事は、片山にとってはいわば、究極の目標だったのかもしれない。
では次は、マスターズの優勝ではどうか、と報道陣に差し向けられても、「僕は、これまでも自分に出来ると思える目標しか口にしてこなかったんですよ。捉えられない夢は、語りたくないから」と、かたくなに首を振る。

今季の日本ツアーでは、「もはや目標が見つからなくて」。
頂上を知ったものだけが知る苦しみとの戦いが、ずっと続いている。

もともと、読書の虫だが、近頃ではますます本に没頭するようになった。もはや、書籍の中にしか、解決策を見いだせないと諦めかけていた中で、脱出のヒントは先週の日本オープン。

練習ラウンドを回った中嶋常幸が、まるで片山の今の心境を見透かすように、ふとこんなことを言い出した。

「マスターズが終わって、気持ちが全て灰になり、また燃やそうと思っても灰しかないから燃えない 。しっかりと薪を作ってまた炎が燃える準備をしなさい」（片山のオフィシャルホームページから抜粋）。

この言葉が、悶々とくすぶっていた片山の心に、明かりを灯した。

先週は、その日本オープンの連覇が情熱を燃やす薪の役割をしてくれたと思う。
その余韻で、この２日間は好位置につけられたが、日本ツアーで今年一番の目標も叶えられずに終わってしまい、心はまた元の日々に戻りつつある。

「いま、僕は燃料の木を捜しているところです。燃えるものを捜している」。
いまは18歳の石川遼と23歳の池田勇太が賞金レースを争っている。若手の台頭すら、５度の頂点を極めた片山の心は動かせない。
「あの２人とは、ゴルフが違いすぎて…。感覚が、分からないんです。意味が分からない。だから、火がつかない。もう、どうぞ〜っていう感じで」と、また苦笑い……。

今大会の２勝目に、その鍵はあるのか。
「明日は大丈夫です。安全運転で、エコドライブで行きます」と賞金王は、大会が推し進める環境キャンペーンに、週末への意気込みを引っかけつつ、なんだか達観したような笑顔で言ったが…。

• 片山 晋呉
• 中嶋 常幸
• 石川 遼