Tournament article

長嶋茂雄 INVITATIONAL セガサミーカップゴルフトーナメント 2008

石川遼「来年は長嶋さんと表彰式で会いたい」

16歳の力強い足踏みに、北の大地が確かに揺れた。560ヤードの18番パー5。第2打地点にやってきた石川が、グリーン横のスクリーンに大きく映し出されたその瞬間、満員のスタンドがどよめいた。

「おいおい、狙うのか・・・!?」。
「ほんとうに、大丈夫なの?!」

ほとんどちゅうちょなく握った3番ウッド。
口々に言うギャラリーの声は、そこから256ヤード以上も先の石川にはもちろん、聞こえない。
「13番は届かなかったから3打目にかけたけど、18番はイーグルが欲しかったから」。

力強く放たれたボールが花道の上で大きく弧を描き、小さくバウンドしてピン左手前4メートルでピタリと止った瞬間だった。
地鳴りのような大歓声をバックに石川が飛んだ、跳ねた、踊った!!
両足で大地を踏みならし、全身で喜びを表現した。
力強く握った拳を、何度も地面に向かって振り下ろした。

結局、最後のイーグルパットを外して歯がみしたが、「最後の勝負であのセカンドが打てたことは自信になる」。
2日目の18番で刻んでバーディを奪い、今までになかったプレースタイルで魅せた石川だったがやはり、最後は本来の持ち味を発揮して優勝にも迫る猛チャージで盛り上げた。

本人も納得のスーパーショットは、あの人もちゃんと見ていた。

大会名誉会長の長嶋茂雄氏は、グリーンサイドのテントから石川のプレーを見つめていた。
ホールアウト後、その姿を見つけて駆け寄ったものの、緊張しきってただただお辞儀を繰り返すだけの石川の右手をしっかりと握りしめた“ミスター”は、後に「16歳という年齢ながら、多くのギャラリーを引き連れてもプレッシャーに負けることなく、アグレッシブで、すがすがしプレーを北海道のギャラリーに見せてくれました」と、賛辞を寄せた。

この日最終日は「北海道の方にゴルフを見ていただくのは初めなので、着てみました」という史上最年少優勝を飾った日と同じ、赤のパンツを選んだ甲斐はあった。

「今日は優勝するチャンスとは思ってなかったけど、いつの間にかリーダーボードの1ページ目にいた感じ。こうなったらちょっと悔しいけど、でも最後まで諦めないでプレーして本当によかったです」。

記念すべき北海道初上陸は、今季自己ベストの3位タイ。
「3位は響きがいいし、今は気分がいいけど、将来は3位は聞きたくないという選手になりたい。来年は、長嶋さんと表彰式でお会いしたい。そして、僕も長嶋さんと同じ歳になったとき、同じようにオーラを感じさせる人になりたい」。
この日最終日にのぞいた青空のごとく、16歳の夢はどこまでも広がっていく。

関連記事