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KBCオーガスタ 2007

竹本直哉が単独3位に

ドライバーのティショットすら、大きなターフを取って打つ独特のスイングは、この日3日目乱れに乱れた。「暑さのせいで、疲れて下半身が止まっていた」。そのせいで、手が遅れて入ってくる。右へ左へ曲がりに曲がった。

「“テンプラ”も3回打った」。
同じ組でまわった横尾要も、たまりかねて声をかけた。
「もうちょっと、ショットを練習しなくちゃな」。

しかし、そんなことは本人だって百も承知だ。
「僕は確かにショットが下手ですからね」と、平然と言う。
でもだからこそ伸びシロがある。「まだまだ僕は上手くなれると思っているから」と、竹本は言う。
「練習して、どんどん上手くなっていくことが僕は楽しくてたまらないんですよ」と、カラカラと笑う。

足りない部分を補って余りある。リカバリーできるアプローチとパットがある、という自負もある。
竹本の小技の上手さは、ほかのトッププレーヤーたちも認めるところだ。

常に前向き。そして強気。
「勝負が終わるまで、自分が勝つもんだと思ってやる。僕はそういう選手だから」と言い切った。
そんなプラス思考に磨きがかかったのは今年7月だった。
UBS日本ゴルフツアー選手権 宍戸ヒルズで片山晋呉と最後まで優勝争いを繰り広げ、2位に入った。
そのとき見た賞金王のプレーぶりをしっかりと胸に焼き付けた。

ミスしても、ほとんど表情を変えない。
「何があっても不貞腐れない・・・って、口で言うより簡単じゃない。でも、片山さんはそれができるんです」。

また賞金王の絶対に「俺が勝つ」という凄まじいまでの執念を、心に刻んだ。
「あれだけ勝って、3回も続けて賞金王になって、それでも片山さんはまだ諦めない。よりベストな1打を打つためにはなんだってやる。貪欲に勝ちに行く。・・・その気持ちが大事なんだと」。

「どんなにゴルフが上手くても、必ずしも勝てるというわけではない。上手いと強いは違うんだ」とは、プロたちがよく口にするところだ。

再三のピンチを乗り越りきって、前日2日目よりさらに差を詰め、竹本は言った。
「追いかける4打差は厳しいけれど。僕も明日はビッグスコアを出したい」。
自分を信じる強い気持ちが、技を凌駕することもある。

竹本直哉たけもとなおや
1976年11月25日生まれ、和歌山県出身。
湯浅小学6年生まで地元・湯浅町で過ごしたあと、奈良県の智辯学園中学に進み、卒業後に母で女子プロの茂美さんの進めで単身渡米。
パームスプリングスの公立高校に進むと同時にゴルフを始め、UCサンタバーバラ校ではゴルフ部で活躍。
ジュニア時代のライバルに、2003年全英オープンチャンピオンのベン・カーチスや、成長株のジェイソン・ゴアがいる。
帰国後、すぐにツアープレーヤーを目指し、5度目の挑戦となる今年のファイナルQTで23位にランクイン。
7月のUBS日本ゴルフツアー選手権で片山晋呉との優勝争いの末に2位に入り、初シード入りを手中にした。
得意なクラブはサンドウェッジ。趣味は読書とギター。 身長173センチ、体重65キロ。


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