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日本プロゴルフ選手権大会 2006

尾崎直道、幻の単独首位

意気揚々とスタートしていった直道
1週間後の今月18日に50歳。このあと、アメリカに旅立つことになっていた。米シニア・チャンピオンズツアーへの本格参戦。25日開幕の全米プロシニア(オークツリーGC・オクラホマ)をデビュー戦に、そのあと3試合の出場もすでに決まっていた。
今週を最後に、しばらく日本を留守にする。先週の連休には、実家・徳島の墓参りも済ませてきた。
この日初日は午前スタートの時点で、2位に3打差つける7アンダーをマークして単独首位。
このまま独走できれば、心置きなく出発できるはずだった。

「最高の試合にしたかったのに。40代最後の試合がこれか・・・」と、うなだれた。

前夜から断続的に降り続いた激しい雨。
この日朝、競技委員会は急きょ特別追加競技規則を発表した。
スタートの1番、10番のスタートテントにそれぞれこのように貼り出されると同時に、競技委員からの説明がなされた。

『スルーザグリーンにある球は、罰なしに拾い上げて拭くことができる。その後、その球は必ずリプレースしなければならない。注意:球を拾い上げる場合は前もってその球の位置をマークしなければならない。(規則20条-1参照)』

いわゆる「リフトアンドクリーン」の処置である。
直道は、これを「勘違いした」という。

やはり、コース不良のときに出されることがある「プリファードライ」という特別規則がある。
これは、「罰なしに球を拾い上げ拭いたあと、6インチもしくは1クラブレングス等の許容範囲でプレースできる」というもの。
ジャパンゴルフツアーではこの特別規則を出す際、「1クラブレングスでプレースできる」とすることが多い。
「・・・今回もマークしてボールを拭ける、と言われた時点で1クラブ動かしてもいい、と解釈しちゃったんだな。ちゃんとルールを読んでもいないし、見てもいなかった」(直道)。

もとの位置にボールをリプレースしなかったことで大会主催の日本プロゴルフ協会は、直道が「ゴルフ規則20条の1の違反を犯した」との裁定を下した。
それによれば2打罰を加えなければならないところだが、これを怠りスコアカードを提出してしまった。

「スコアの過少申告」で競技失格。
そしてやはり、直道と同じように勘違いしていた同伴競技者の深堀と丸山も、3人そろって失格という事態となってしまったのだ。

特に当初、単独首位でホールアウトしていた直道には、いっそう痛手が大きい。
「1クラブも動かしてるんだもの、良いスコアになるわけだ」と、自嘲と落胆の色を隠さず、「ファンの人には、ほんとうに申し訳ない・・・」と、最後に頭を下げてコースを去った。

※やはりスコア誤記で失格となった丸山大輔の話「ボールを拭いたら、1クラブ動かせると疑いもしなかった。仕方ない、自分が悪い。それより(首位だった)直道さんがいちばん残念だと思う。一番年下の僕が、ちゃんと知ってて指摘するぐらいのことをすべきだった」。

※「リフトアンドクリーン」と「プリファードライ」は通常、競技委員が芝やコース状況を見ながら、いずれの特別競技規則を出すかを決定します。
「リフトアンドクリーン」は、ジャパンゴルフツアーでも99年の三菱自動車トーナメント(現・三菱ダイヤモンドカップ)で採用されています。また昨年のチャレンジトーナメント「東京ドームカップ」や、今季の開幕戦「PRGR CUP」でも採用されました。


  • しかし思わぬ競技失格。落胆しながらも気丈に「大輔、気を落とさずお互いアメリカで頑張ろう」と、同組の丸山(右)を慰めた。

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