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日本オープンゴルフ選手権競技 2004

中嶋常幸 2アンダー暫定2位でホールアウト「この大会は、僕の誇りです」

伊沢利光が、そばを通るたびに、言い残して去っていく。「中嶋さん、それ、使うの5年早いですよ」。そう言われても、中嶋の決心は揺るがない。
「だって、どんなピンチも助けてくれるんだよ。こんな易しいアイアン、使わない手はない! ・・・なんでもっと早く使わなかったのか。いまじゃ後悔しているくらいなんだから!」。

それほどまでに、中嶋が心酔しているのは、ダンロップのゼクシオアイアンだ。

以前、使っていたスリクソンがどちらかといえば、プロやアマチュアの上級者向きなのにくらべ、フェース面がワイドで、スィートスポットが広いそれは、いま、中級以下のアマチュアに大人気。

中嶋が、このアイアンを手に取ったきっかけは、先週のコカ・コーラ東海クラシックだった。
初日の7番パー5で最高のティショットを打っておきながら、フェアウェーセンターから残り202ヤードの第2打を、4アイアンで左がけ下に打ち込んだ。
「・・・俺も気分転換が必要だな」。以前から目星をつけていたアイアンを、握る決心がようやくついた。
この大英断が、はまった。
この日初日の13番パー3。ティショットの感触はそれほど良くなかったのに、「(両手で幅を作って)こんなについちゃった! 嬉しかったな」50センチに乗せてバーディ。再三のピンチも、難しいライからのショットも、きっちりとピンに寄せられた。
「ほんっとこのアイアン、頬ずりしたいくらい!」まるで初恋の人に出会ったみたいにはしゃいでいた。
はじめは「ダメもと」で握った新しいアイアンで、思った以上の結果が残せた中嶋には、「それを持つのはもう少し先でもいいのでは」との“賞金王”の助言も、耳に入らなかった。

夏場にぶり返した背中の痛みは、9月のサントリーオープンでピークに。4試合連続の予選落ちが続いていたが、新しい道具の採用でいっきに息を吹き返した。
この大会は、過去4度の優勝経験。しかも、いずれも連覇だった。
「それは今でも、僕の誇りです」としみじみと振り返る中嶋は、今月20日に50歳の誕生日を迎える。1991年以来5度目の日本一の座を、その前祝いとしたい。

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