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中日クラウンズ 2003

『何の緊張も沸いてこない自分が不思議だった』ノンプレッシャーで手に入れた星野英正のツアー初タイトル

14番で残り13ヤードのチップインバーディを決めて、混戦から抜け出しても、星野の心は静かに凪いでいた。
「プレー中はずっとスコアボードは見ないようにしていたから」(星野)という理由だけではない。2打差で迎えた16番では、でっかいスコアボードが否応なしに目に入ったが、それでも何のプレッシャーも沸いてこない自分が不思議だった。
同時に、そのとき星野の体には、確かによみがえるものがあった。それは、「アマ時代の勝ちパターン」だ。

デビュー前に、奪ったタイトルは52個。日本アマ3勝(96年、98年、99年)をあげてプロ転向した選手は倉本昌弘以来だ。しかも96年大会は、2位と15打差という驚異的なスコアで勝った。
あのとき、体に刻み込まれた数々の経験が、この難コースの和合でもいま存分に生かされているのを、星野は強く感じていた。 「今日は自分でもビックリするほど冷静だった。それは、アマ時代とまったく同じ感覚でした・・・」
自身の順位を確認した16番で、4メートルのバーディチャンスをど真ん中から決めて、普段はほとんど感情を表さない男から思わず飛び出したガッツポーズ。
それが、勝利の合図だった。
3打差で迎えた18番のティショットは、この4日間ではじめてフェアウェーを捉えた。手前のピン位置に対して、しっかりと奥7メートルにつけ、確実にカップに寄せて2パットで決めた。
25歳にして手に入れたツアー初タイトルは、歴史と伝統の中日クラウンズ。「まさか僕がここで勝てるなんて・・・」 デビュー4年目にして見せた、満面の笑み。
これまで味わってきた苦しみも悔しさも、この日の和合の青空のように「一気に晴れた」瞬間だった。

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