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マンダムルシードよみうりオープンゴルフトーナメント 2003

『すべては気持ちの問題だったかな』伊沢利光が2位タイ、いよいよ復調の兆し

ひたむきに球を追う瞳には、1点の曇りもない。
それと同じに伊沢の心も、静かに澄み渡っていた。
「ダメならダメでもいい。いずれ上がっていくのを、待つ心境で今日はゴルフができ ました」
2001年には、賞金王に輝いたものの、昨年は、国内では1勝もできなかった。
普段はマイペースの伊沢も、最近では、さすがに思うように結果が残せない苛立ち が、募っていた。 「そろそろ、なんとかしないと」と焦るほどに、チャンスはスルスル逃げていく。 「ここでバーディを!」などと意気込むほどに、空回りが続いた。
そんな様子を見かねたマネージャーが、今月2日、伊沢をある場所に連れていってく れた。
滋賀県の比叡山延暦寺。伊沢を、大阿闍梨の酒井雄哉(ゆうさい)師に、引き合わせ るためだった。
そこで約4時間もの間、酒井師とじっくり話しあった。今の自分の心境を包み隠さず 打ち明けた。酒井師は言った。
「優勝することも確かに大切だが、あまり難しく考えすぎてもいけない。上空からゴ ルフ場を眺める心境で、そこで“ゴルフをしている人たちがいる”と考え、自分もそ のうちの一人としてゴルフをしているだけ、という感じでやりなさい」その言葉に、 一気に気持ちが晴れ渡った。
今週は、コーチの江連忠のアドバイスで、「いつもよりハンドアップ気味に構えてい る」というほかは、技術的にはそれほど、何か大きく変えているというわけではな い、という。
それでも2位タイの、久々の好発進には「すべては、気持ちの問題だったかな」と伊 沢。
ホールアウト後は、師匠の尾崎将司と同スコアで並んでいることにも気が付かなかっ た。自分がいったい何位にいるのかさえ気にならず、「今日、ラウンド中に思ってい たことは、とにかくボールを思うとおりに打つ、ということくらい。最終日まで、 ずっとこんなゴルフができたらいいな」
迷いを捨てた伊沢が、いよいよ、復活の兆しだ。

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