Tournament article

JCBクラシック仙台 2003

『先輩を、たててくれてありがとう』最終日は48歳と22歳の一騎打ち、宮里に闘争魂を剥き出しにされた友利勝良は・・・

4日間連続で、インタビュールームにやってきた友利は、なんとも照れくさそうな顔をして言った。「いやあ、また今日も、ここに来れるとは思わなかったデス」
その人の良い笑顔とはうらはらな、この日最終日のプレーぶりだった。「(優勝争いは)久しぶりなもんで、さすがに出だしはしびれていたんです」とのコメントも、疑いたくなる。それほどに終始、冷静なゲーム運びだった。
象徴的だったのは宮里優作と、2打差で迎えた12番だ。11メートルのイーグルパットを決められて通算18アンダーで、並ばれた。しかし、そのとき3メートルのバーディパットを残していた友利には、動揺は微塵もなかった。

「僕がこれを入れればまた1打、勝つわけですから・・・。それにここで入れられないと、僕のゴルフじゃないですよ」
12番の、友利のバーディパットは、「2日目とまったく同じ位置」だった。2日目は外したが、だからこそ、ラインはしっかりと読み切れていた。「2日目より、少しヤマをかけて(ふくらませて)打ったら入りました」。このバーディで、容赦なく宮里を退けて、結局、一度も首位の座を明け渡すことなく最後は2打差でゴールを切った。
前半の9ホールでは、22歳の宮里と、25歳の高山忠洋、2人の動きを静かに観察しながら「堅いゴルフ」を展開していた。なんとかリーダーを捕らえようする若い2人が、攻めるあまりにかえって伸び悩んでいたから。スタート時、友利は5打差の余裕もあった。無理して攻めることはない。飛ばし屋2人にティショットでは常に後ろに置いていかれても、「冷静に行こう」と、マイペースを貫いた。2人を横目に、淡々とフェアウェーをとらえ、淡々とグリーンの真中を狙い、じっとパーを重ねていったのだった。

だが7番から、宮里の3連続バーディで状況は一変する。9番で、3打差まで詰め寄られた。11番でさらに2打差。途端に、友利がキバを剥いた。それまでの守りのプレーをひるがえし、攻めの姿勢へと転換した。「相手のミスは考えられない・・・。ピン狙いのゴルフを」。猛然と向かってくる宮里を見てとるや、プレースタイルを180度、豹変させた48歳は、22歳と一騎打ち。マッチレースにたちまちゲームが、熱く燃えた。
この日の18ホールを振り返り友利は言った。「前半は長く、後半はあっという間に感じました」。それほどまでに、この後半戦の勝負にのめりこんでいた。
22歳の若者に、95年の日本マッチプレー王者が内に秘めた闘争魂を剥き出しにさせられたのだ。
勝負は、16番で友利が3メートルのバーディチャンスを決めたとき、決着がついた。相手の出方を見ながらの冷静なゲームプランと、ベテランの技がうまく噛み合って実現した、8年ぶりの勝利だった。
18番で、ボギーパットのウィニングパットを沈めると、さっきまでのゴルフがウソのように、またいつもの友利に戻っていた。
激戦を、たった今終えたばかりとは思えない。穏やかな笑みのまま、差し出された手を握り返した友利は、宮里の耳元で囁いた。
「今日は先輩をたててくれて、ほんとうにありがとうな・・・」

関連記事