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久光製薬KBCオーガスタ 2000

杉本周作が、8番ホールでホールインワン

「入ってもたな…」

 「入ってもたな…」杉本がその瞬間、思わずつぶやいたのは、こんな素朴なセリフだった。
 通算4アンダーで迎えた165ヤードの8番、パー3。7番アイアンのティショットは、若干フォローの風に乗ってまっすぐピンに向かっていき、ピン手前1.5メートルでバウンドしてそのままカップに吸いこまれた。
 デビュー以来、はじめてのエース達成。勢いに乗って続く最終9番もピン左8メートルを沈めてバーディで締めくくった。

 2ホールで一挙に3つ稼いで通算7アンダー、2位タイ。だが本人は、「なんか…凄いですね…」とまるで他人事のようだ。「だって…、今日のスコアはたまたまみたいなもんですから…」。

 今季前半戦は新しい契約先のクラブとのマッチングが思うようにいかず、ふるわなかった。
 現在賞金ランク105位。そのせいというわけではないだろうが、ときどき童顔に不精ヒゲのままコースに現れたり、その姿に苦悩の色がにじみ出ていた。

 「今までは、“こういう球が打ちたい”とイメージして振っているのに実際の球筋は、自分の思ったとおりの目線方向になかったんです。メーカーの人と試行錯誤を繰り返し、最近になってようやく70点くらいはつけられるクラブが、出来あがってきました」

 大阪の近畿大学在学中にはさまざまなアマタイトルを獲得。また、デビュー後は後援競技や地区オープンでの優勝経験はあるが、ツアーはまだ未勝利だ。
 「早く1勝したい気持ちは強い…けど、僕はまだまだ下手クソですから。こんないいスコアも出せるときなんてめったにないですもん(笑)。しかもホールインワンまで…出来すぎです。
 でも、たまにこうして爆発できたときが踏ん張りどころ。今週こそ粘って上位に食い込まなければ。願ってもない、チャンスが来たという感じですね」と静かな闘志を燃やしている。

写真 : 初のエースを達成したボールを片手に杉本はニッコリ。このあと、このボールにサインをしてキャディさんにプレゼントしていた。なお、8番はホールインワン賞の該当ホールではなかったが、芥屋GCからお祝いの10万円が贈られることになっている。

★ 杉本周作
 ゴルフをはじめたのは10歳のとき。ジュニア時代には目立った成績はないが、近畿大学在学中にメキメキと腕を上げ、3回生のとき関西アマに優勝すると、同年の日本アマにも勝って注目を集める。翌95年はプレーオフを制して日本アマ連覇。その勢いでプロテスト一発合格を果した。
 初シードはさらに翌年の96年。昨年はダイドードリンコ静岡オープンで2位に入るなど、3年連続でシード権をキープしている。

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