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ロピアフジサンケイクラシック 2025

腐っていたタイガ=長野泰雅が再びやる気になりリベンジを実行するまで

長野泰雅(ながの・たいが)は1打リードで迎えた最後18番で、1メートルのパーパットを残して本気で願った。


「プレーオフには行きたくない」。

トラウマは、一昨年前。6月の「JAPAN PLAYERS CHAMPIONSHIP by サトウ食品」で、同じ距離のパーパットを逃して谷原秀人とプレーオフにもつれて敗れた。

以後、同様の距離で手が震えることが増え、1年間は「腐ってた」。今季、クラブをフリー契約に変え、「いいクラブを使うとクラブのせいにはできない。練習しなければいけないし、クラブの相性とかスイングだったり。自由に選べるのが楽しかった」と言えるまでに再びやる気を取り戻せるまで、後遺症は尾を引いた。

3人タイの首位で出て、2番から連続ボギーが先行したときも「また負けるのか」と、頭をよぎった。でも、組んで3年の山本キャディに励まされてこらえた。
「我慢していれば必ずチャンスは来る」。

最終組の3人は、長野を含めて誰が勝っても初Vだった。年齢も近い岡田と細野と「絶対にこの組から勝者を出そう」と、誓った。
2番のチップインバーディや、3番のショットインイーグルなど、前組の蟬川がたびたび起こす歓声にもじっと耐え、5メートルを沈めた8番でようやく初バーディ。

態勢を立て直した。

初日からの首位を守った前日3日目。
小学時代から知る幼なじみの石塚祥利(いしづか・しょうり)に勝利宣言した。

石塚(左)にV宣言してました! 右も幼なじみの内山

石塚が、初の最終日最終組を戦った前週の「Sansan KBCオーガスタ」で、18ホールをついて歩いて応援したばかり。

普段は他人に頓着しないが、大親友の9位敗戦は自分事みたいに悔しくて、「先週、勝てなかった分、今週は俺が勝つから」と、大親友のリベンジを誓って最終日を出た。


組んで3年目になる山本キャディとの雪辱戦でもあった。

初タッグの23年「パナソニックオープン」でも最終組で初Vを狙ったが、2番のダブルボギーで早々に遠のいた(結果は4位)。
「あのときのリベンジしましょう」と、約束した。「12、3番あたりでエンジンかけます」と、言った。
そのとおりに12番で2メートルのパーパットをしのぐと、「よし行くぞ」と、13番のパー3で7アイアンを操り、今度はべたピンバーディ。

14番パー5では2オン2パット。
連続バーディで、再び首位に並び直した。
林に入れた15番をパーでしのいだ。
4メートルを沈めた16番でついに単独トップに抜け出て、ガッツポーズも出た。



    「追いかけるのは好きだけど、追い抜くと今度は自分にプレッシャーをかけてしまうから苦手。17、18番はけっこうしびれた」。
    1差で入った18番で、1メートルのパーパットを残した時も震えて、「うわ、また同じ距離が残ったよ…」と、山本キャディにわざと声を出したのは、一昨年の二の舞を踏まないため。


      谷原とのプレーオフにもつれて敗れた一昨年は、緊張しすぎて声も出なかった。
      「だから今回はふざけて『外すかも』と言ったり、思ったことを声に出すようにした」。
      すると、自然と手の震えが消え、「全然手が動いてくれて、すんなりと打てた」という。

      派手に水を浴びせてくれた現在賞金1位の生源寺龍憲(しょうげんじ・たつのり)は、生源寺が長野の地元福岡に越してきて以来、「一緒に練習したり」と、目標にしている選手のひとりだ。

        高2から、チームに入れてくれた歴代賞金王の小田孔明(おだ・こうめい)にも「ずっと横で教えてくれた」と、感謝。

        お父さん、お母さんの現地応援を断ったのは「来ると緊張して負けてしまう」という息子の勝手なジンクスから。
        でも、V副賞の「フェアレディZ」は、「お父さん、お母さんに…」と、やさしい声が出た。


          幼なじみの石塚によると「今も小学生みたい。いつもはふざけてばっかりだけど、勝負になった途端に人が変わってここ一番で本領を発揮する。きょうも勝つ、といって本当に勝ったので。さすがだな」と、感心していた。

          石塚(右)は沖学園高校の1年上ですが、「お互い先輩後輩と思ってない笑」(石塚)それほど仲良し

          18歳の21年にプロ転向し、10代優勝を目標に掲げたが、勝てずに過ぎた4年を「長かった」と嘆息するが、まだ22歳。
          目下目標は、勝者にマスターズの出場権が付与されることが決まった10月の「日本オープン(栃木県・日光CC)」で、優勝すること。
          「2勝、3勝してゆくゆくは、海外に行きたいんですけど、いま一番の近道はそれなんで」。
          次の有言実行は決まった。


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