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パナソニックオープンゴルフチャンピオンシップ 2019

石川遼が2週ぶりのツアーで抱く思い

2週ぶりのツアー。すがすがしい気持ちが、表情に現れていた。オフに充てた先週の丸1週間は、「あっという間でしたけど、休んだことで疲れが抜けたと思います」と、石川。

8月のセガサミーカップで自身初の2戦連勝を達成して、2年ぶりに賞金ランク1位に浮上。
その後、3戦続けて上位で争い、フジサンケイクラシックとANA
オープンでは最終日の猛追で、2試合連続のトップ10入り。
「いい位置でプレーできたし、優勝争いの中でやれた。そういうときはアドレナリンが出て、翌月曜日にはそれが一気に落ちる。多少なりとも頭も疲れるし、回転も鈍くなる」。

先週の「Shinhan Donghae Open」は、史上初の日亜韓3ツアー共催で行われ、日本ツアーにとっては新規開催のトーナメントだった。

選手会長の出場を望む声は当然、多くあったし本人としても、出たい気持ちは相当だった。
何より、09年以来となる2度目の賞金王を狙う、というなら「他の上位の選手の成績も気になる。出て、1円でも多く稼ぐ」と、目先を追いたくなる気持ちも石川には少なからずあったというが、あえて苦渋の決断をとったのは、石川には米ツアーからの撤退を余儀なくされた瞬間から、胸に抱いてきた大きな目標があったから。

「もう一度、世界の人たちと戦い、その人たちに勝つというのがあくまでもゴールで、賞金王はゴルフ人生のゴールではない」。
その決意を新たに見直すにも充分な先週の1週間であったようだ。

「先週は、去年から書いているノートを見直して、自分の気持ちと向き合い、ああそうだ、と思い出す」。
無理をして、疲れがたまった体と頭を引きずり、試合に出続けていたのでは、持つことができなかった自分の時間。
「試合に出続けると、どうしても目先のことを追いがちになる」。
5シーズンを戦った米ツアーでも、身に染みたことである。
「順番が回ってきたときには”出とかないと、その間に何人賞金ランキングで抜かれるか”。休むとそれが怖かった」と、どんなに疲れていたとしても休む勇気も持てずに、気持ちの余裕をなくし、そのうち目標も、どんどんと小さくしぼんでいったことに気づく暇も無くした。

あの失敗も踏まえてここで一度、立ち止まるという決断を石川はした。
「日曜日に帰って、いつものように月曜日にトレーニングをして…木曜日まで3日間しかない、というのと次の木曜日まで10日ある、というのでは全然違う。試合のことを、考えずに過ごせる時間」。
身も心もリフレッシュして、戦場に戻ってきた。

「09年に賞金王になれたことは、山に例えると富士山。富士山を登りきることも、もちろん簡単なことではない。だけど今年はこれまでエベレストに登ることを目標にして行動してきたので、これからもそれを続けたいし、今はまだレベルが足りないから登るために準備している状態。スケジュールに関しては、これからも自分に一番ベストという判断をしていきたい」。
もういちど、世界一の山を目指す覚悟だ。

今年の開催コースの兵庫県・東広野ゴルフ倶楽部はプロ初年度に出場した08年の「三菱ダイヤモンドカップ」時に初挑戦。当時は95位タイで、予選落ちを喫した。
「あのときは、どこでも全部ドライバーを振りましたけど今回、刻むホールは今年の中でも一番多いんじゃないかな?」。
オフの間に28歳の誕生日を迎えた。
あの頃からちょうどひと回り、歳を重ねてここからまた、新たなドラマを紡いでいく。

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