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ダンロップ・スリクソン福島オープンゴルフトーナメント 2019

上原さんに捧げます(成就編)

プロキャディ修行中の小沼さん(右)には、地元初Vを捧げて喜びを分かち合った。
最終日が降雨のため中止となり、3日目に通算20アンダーの単独首位としていた23歳の星野陸也に優勝が転がり込んだ。
大会は54ホールに短縮され1000万円のV賞金も、加算額は75%に減額されるが「優勝は優勝。最終日もやってというのが一番嬉しいけど、最終日をやっても多分勝てましたよ」。さりげなく豪語したが、この選手は不思議とふてぶてしくもならず、照れて前言撤回みたいに「優勝した今だから、何とでも言えますね」。
柔和な丸顔で、破顔一笑。

最終日は10アンダーを出して勝つ気でいた。
「今日は30アンダーとか行ったら格好いいなと思っていた」。
新記録(※)による2勝目の快挙に挑戦はできなかったが「それはまた次に持ち越し。来年は、新記録で連覇できるように頑張りたい」。

23歳のホストVが、どれほど多くの人を喜ばせたか。
レギュラーツアーでは、初タッグとなった小沼泰成キャディは星野の地元茨城県水城高校で「3年間、クラスが一緒。友達の中の友達でした」。
小沼さんは、野球部だったが星野の影響で卒業後にゴルフにハマり、出身の福島県いわき市に戻って一度は企業に就職したのに「プロキャディを目指したい」と脱サラ。昨年、相談を受けた星野が「じゃあ、一度俺のをやったら?」。今週は小沼さんの地元で自ら練習台となり、「違うときは違うと僕もいろいろと教えながら、向こうも気を遣わずお互いなんでも言い合った」。
修行中の親友には、自信のつく"初V"を贈ることができて「本当に良かったです」。

恩人への餞別には、プロ4年目の自身の成長を示した。
大会主催の住友ゴム工業で、プロのクラブや用具を準備する「プロサービス」として勤続28年。上原輝久さんの今週限りの部署異動には、開幕前から契約プロの誰もが熱くなっていた。
星野も「自分もプロに入ってからは、ずっと上原さんと一緒。いつも、すごく気にかけてもらってお父さんみたいに感じていた」と今週は、感謝と名残惜しさが加速していた。

16年のデビュー時には連戦の体重減に悩み、昨年も4月の開幕から数か月で6キロも落とした。
スタート時間が中途半端な日は昼食を抜くこともあり、反省から今は1日3食を心掛ける。
トレーニングも欠かさず日々鍛え、モリモリ食べて現在は過去最高の78キロ。
飛ばし屋が逞しさを増した分、さらに飛距離が伸びて「最近、距離感が合っていない気がしていた」。
練習場で、測定器を使って全部調べなおしてみたのは今週25日の火曜日。
「全クラブのフルショットを打ち続けて3時間」。次の日は筋肉痛になったが全クラブを数値化してみて「いまの自分の飛距離を見定められた」。今週のベント芝対策として、新ドライバーの選定も入念に「そういう調整がたくさんできたことも今週の優勝につながった要因」。

そんな開幕直前の根気のいる作業に「最後まで付き合ってくれたのも、上原さんでした。ありがたかった」。
恩人の最後の仕事に、結果で応えた。
「上原さんのために本当に勝ちたかった」と降雨であいにく室内でとなった表彰式で、真っ先に恩人の姿を探した星野。
「えっ?! もう帰っちゃったの? 上原さん、いないの?!」。
初日の木曜日にすでに、上原さんは撤収していたと聞いて直に優勝V報告ができずに残念がったが「あとですぐ電話します!」。
ホストVを喜ぶ上原さんの、陽気な博多弁が聞こえてきそうだ。

※ツアーの最多アンダーパーは2014年の「トーシントーナメントinセントラル」でIHホが記録した「28」

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