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祝・初V。堀川未来夢の友情物語

優勝間近を聞きつけて、続々と人が集まってきた。めいめい、冷たくひえた水のペットボトルを持っている。中には巨大なバケツに並々と水を汲んで待つ、つわものも。
みんな堀川を祝福に来た人々である。

日大OB勢は"レジェンド"片山晋呉を中心に、この週予選落ちにもかかわらず、再びコースに来た先輩の大槻智春の姿も。
年上にも可愛がられる男である。

堀川の笑顔をプリントした揃いのTシャツを着て、待ち構える謎の大・応援団など駆け付けた人の、あまりの多さに勝利の水かけも1度で終わらない。
2度、3度…4度と宍戸のいたるところで飛び散る水しぶき。

だが日大同期の大親友にもかかわらず、どの回にも加わらずに傍観していた男が一人いた。大会主催のJGTOの競技運営部に所属する職員の大堀直紀という男である。

ジュニアのころから存在は知っていたものの、大堀が堀川と親しく話をしたのは日大ゴルフ部に入部してからだった。
「彼のゴルフに対する情熱や、人に対する思いやり。優しさ。友達思いの彼は誰にでも好かれた。彼を信頼して彼になら、ついていこうという人がたくさんいた」。堀川のキャプテン就任は、必然だったと大堀は思っている。

ゴルフの腕も群を抜いており、「彼に勝てないと分かった時点で、僕はプロでは無理と悟った」と、述懐する。
チームメイトとして友情を深めて4年目。
卒業年を迎えて、2人は人生の岐路に立った。
堀川は迷わずプロの道へ。
かたや、JGTOへの就職を決めた大堀を、堀川はことのほか喜んでくれたという。
「プロと、プロを支える裏方。立場は違うけど、一緒にゴルフ界を盛り上げていこう、と」。誓い合い、5年前に互いに新生活をスタートさせた。

プロ入り後もコーチとして4年ほど大学寮にとどまり、合宿時は自身も"セルフバッグ"で後輩の面倒をみながら共に汗をかく堀川の姿を大堀は、いかにも彼らしいと思って見ていた。

ルーキー年の15年に初シード入りをしながら、翌年には陥落。
昨年は2度のV逸も、大堀は職員として複雑な思いで見てきた。
「負けた翌日でも彼の性格からして深刻になることもなく、僕も重い感じではなく残念だったね、次は頑張ろうよ、と」。
あえて、明るく声をかけてきたがやはり同級生が、負ける姿を見るのはつらかった。
「僕はトーナメントを運営する立場だし、彼を含めてプロのみなさんのいい味を出せるようにサポートするだけだ、と。そう思って…」と、そこまで言うと大堀は、急に言葉を詰まらせ号泣。

初日のスタートからいきなり6連続バーディで、会場を驚かせた堀川。
大会は、2日目に落雷と濃霧のため順延となった。同組のジャンボも崔虎星(チェホソン)も棄権し、3日目の早朝に再開した第2ラウンドの残り6ホールを1人でこなして首位を守った。
続く第3ラウンドの17番では、ドラマチックなカップインイーグルもあった。

4日間とも神がかりな完全優勝で、JGTO主催の20周年大会を大いに盛り上げてくれた親友。
目の前で、歓喜の瞬間を見られただけで大堀は満足だ。

親友の水シャワーを横目に止まらぬ涙を拭きながら、大堀は表彰式の準備を始めた。
「おめでとう」と、真っ先に言いに行きたい気持ちはこらえた。
「仕事ですから。そこは分けないと。おめでとうは、全部終わってから」。
やせ我慢して黙々と業務をこなす大堀に、堀川が抱きついてきたのは表彰式が終わり、18番グリーンサイドのVIPテントでボランティアさんたちに、感謝を伝えるパーティの前。いつもの大きな笑顔で「大堀、やったよ!」。その手にウィングボールを握らされたら再び涙腺崩壊だ。

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