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アジアパシフィックオープンゴルフチャンピオンシップ ダイヤモンドカップゴルフ 2018

みんな岩田寛の笑顔が見たい!?

呑めば非常に楽しい酒だと聞いている。宴席では饒舌に語り、ときどき大胆ないたずら心ものぞかせる。

しかし、ひとたび人前に立つとたちまち口が重くなってしまう。
「ヒロシを喋らせたかったら、酒を飲ませるしかない」と冗談を言う人もいるくらいだ。

60台を並べたこの2日間。
質問のたびに、長く続く沈黙。やっと口を開いたと思ったら、申し訳なさそうに「うまく説明できません・・・」。
連日、インタビューをしてくださった中継局、関西テレビの皆さんも、さぞ戸惑われたことだろう。

ことゴルフに関しては、忠実に表現しようとするあまりに、語る言葉に慎重なのだ。
中継ブースから、テレビ解説の水巻善典プロに「ヒロシの笑顔が、もっと見たいな」。呼びかけられて、精一杯笑ってみせるが、引きつってしまう。
この2日間。一緒に回ったまだ13歳のアマチュア、中国の馬重文(まじょうぶん)君を横目に見ながら、つくづくと思う。
「ナイスショットと声をかけても、何も返ってこない。僕も、彼も、人見知りなので」。
大勢の前で、なかなか鎧が脱げないのはまだ少年の彼も、岩田も同じだ。

自分にも、なかなか妥協出来ない。
大雨のこの日も、スコアを伸ばして通算8アンダーで上がった。絶好の位置で、大会を折り返しても周囲の期待に応えるような、前向きな発言が出来ない。

2016年から懸命に居場所を探った米ツアー。
わずか2年で、戻るしかなかった。
「アメリカで、ボロボロになって帰ってきたので。悪かった期間が長かったので。2日間、良いスコアが出てもまだ、いい状態という感じがしない」。

周囲は言う。
「ヒロシは求めるところが高すぎるから」。
練習場で悩む岩田に口々に言ってくれる先輩方々。
「どこも悪いところはないよ」。
「良いショットじゃないか」。
どんなに褒められても「信じられなくて・・・。バカにされているのかと思ってしまう」。
孤高の求道者。
「いつも、自分との戦い」。けっきょく、自分自身が納得しないことには何も解決はしないのだ。

現在、賞金ランキングは91位。低迷が続く今季、悩み深き37歳が、久しぶりにV争いに挑む。
「ずっと優勝争い出来ていなかったので・・・。良ければ攻めて、悪ければ我慢。ひとつひとつ、やっていくだけです」。
ヒロシが心から笑える日はいつか。

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