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ゴルフ日本シリーズJTカップ 2017

祝・W受賞!

喜びもほんの一瞬
こんなハレの日でさえいつものように、そっとパターを受け取り、静かにグリーンを降りた。喜びにむせぶ選手はそのまま家族に託して、バッグを担ぎ、あっさりとクラブハウスに帰っていった。

自称「黒子」のエースキャディはこんな日でさえ、よくある選手とキャディの記念撮影にも顔を見せなかった。
キャディは選手のサポートに徹するべき、というのがその道17年のベテランの信条だ。

青山邦仁さんが、宮里とコンビを組んだのは2年前。
宮里が、名古屋に住まいを移して2年目のころ。
英語も、名古屋弁も“ネイティブ”という青山さんと、優作が息を合わせるのに時間はかからなかった。
それから2年目の戴冠にはその有能ぶりが容易に伺える。

青山さんには実は2度目の“賞金王”だ。
前回は2007年。その年、バッグを担いだ中国の梁津萬(リャンウェンチョン)は、アジアンツアーで賞金王に輝いた。

実績は折り紙付きだった。
今年は、宮里よりひと足お先に栄冠も掴んでいた。
5年前からキャディ間で制定された“ベスト・オブ・キャディ”の授賞式は、先月の宮崎で開かれた。
その席で、刻印入りの某メーカーの特注ウェッジが賞品として贈られた。

“選考委員”のひとりで、武藤俊憲の専属キャディの小田亨さんによると、全会一致で青山さんに決まったそうだ。
当時3勝が一番の評価の対象となったがさらにシーズン最後の最後にもう1勝と、賞金王の称号も加えれば、もう文句なしだ。

小田さんは青山さんの“技量”について「彼は出過ぎず、出なさすぎもせず、選手との距離感が抜群にいい。正解を言わずに、選手を正解を導いていく。選手を乗せていくのが非常に上手い」と、同業者からの賛辞にも青山さんは「僕でもお役に立ったのでしたら、ありがたいことです」と、謙虚だった。
「まさか、勝たなきゃダメというときに勝つのは本当に凄い」と、選手をたたえた。

青山さんがこの2年の優作の、確かな成長のあとを見たのは、3日目の4番だった。
前日は、最後の18番でまさかの4パットを打った翌日。
迎えた最初のピンチは、6メートルのパーパット。「以前なら、雪崩のように崩れ落ちていたところ。どれだけ吹っ切れているのかと思ってみていたら、それをねじ込んできた。腐らずにやっていた。すごく成長していた」。
そこから一気にVロードを駆け上がり、栄光を掴みとった優作。
「あれが大きかった」と、勝利のターニングポイントをしみじみと振り返った青山さん。
「プレッシャーがあったと思うんですけど、まさかですよね。本当に、よくやったですよね」。
いつも寡黙なポーカーフェイスの黒子も、この日ばかりはさすがに少し饒舌だった。
  • 青山さんはすたすたと舞台を降りた。徹底した脇役ぶり。シブい

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