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RIZAP KBCオーガスタ 2016

石川遼が新婚初V、復帰V

勝負メシは、芥屋名物の鯛茶漬け。石川が自身7年ぶり2度目の完全優勝を飾った。腰痛からの復帰2戦目に挑んだ4年ぶりの芥屋で、結果にコミット! 最高の形で順調な回復ぶりをアピールした。

JGTO新会長も喜んだ。「半年以上、ゴルフがやれなかった遼がやっと出てきた。これでゴルフ界はまた盛り上がる!」。青木功の言葉に、謙遜しきりで手を振った。ツアーの人気者が、約半年のリハビリ生活を経て帰還した。

青木は「今日は、遼を追いかける何人かが途中、バタバタしたから遼は自分のやりたいようにやれた」と、最終日のゲームを総括したが、5打差は自身4度目の最多差勝利も、本人にはけして楽な道のりではなかった。
スタートから5ホール続けて、グリーンを外した。「お兄ちゃんは、いつもよりショットが冴えなかった」とは、兄のプレーについて歩いた弟の航さん。「でもお兄ちゃんは、アプローチとパターでスコアを作った。僕もそういうのが出来たら」。初挑戦のツアーで、予選落ちを喫した8つ下の弟にも威厳を示した。

序盤はじっと、パーで堪え忍んだ。追いかけるケネディも、小田も、ボギーが先行して苦戦していた。
おかげで一時は5打差をつけたが「11番で、プレーが中断していなかったらどうなっていたか」。その直前に、左の林に曲げたティショットは大雨で、川のように流れる泥の中。「あのままプレーを続けていたら、ドタバタして。必死でパーを取りに行っても取れたかどうか」。

カジュアルウォーターの救済を受けようと、競技委員を呼んだところで競技が止まった。「追いかける選手にとっては“こいつ、崩れそうだったのに”という。ラッキーでした」。
いったん引き上げてきたクラブハウスで「鯛茶漬けをご飯3杯、食べました」。芥屋名物の“鯛茶”は、本当に美味い!
「悪い流れを断ち切れた」。約3時間後に気分よく、11番の2打目に戻った。
すっかり雨水は引けていた。
泥地の165ヤードをウェッジで、ピン右6メートルに乗せた。2パットパーで切り抜けた。
次の12番パー3は8メートルのバーディトライも決まった。勝機を完全に引き寄せた。「16番では良いティショットが打てて、もう大丈夫かなと思えた」。結果、大差で逃げ切った。

「高校生でプロになり、まだ体が細く、筋力も弱くて前傾姿勢が崩れながらも芯に当てる能力で飛ばしてきた。力がついて、ヘッドスピードが上がってくると、腰に負担がかかるようになった」と、本人にも懸念はあった。
今年2月には、いよいよ50ヤードすら振れなくなり、ついにクラブさえ持てなくなった。
「やはり心技体の体が大事」とまたいちから鍛え直して、徐々に打てる距離と番手を長くしていき、7月の日本プロでまずは復帰初戦にこぎつけた。
とにかく腰に負担のかからないスイングに徹して、予選落ちこそ喫したが、「あのとき、腰はもう大丈夫と思えたことが、大きかった」と、そこからまた3週間をかけて、今度は試合で勝てるまでに立て直してきた。
「ショットはある程度乱れても、核となるものは最後まで持てていた」。
今の石川にとっての“核”とは、ショットのリズムのことという。「その軸は、ブレずに今日戦えた」と、頷いた。「曲げても枠の中にはあったし怪我をする前よりも、スイングは良くなっている」と復帰2戦目にしては納得のツアー通算14勝目だ。

渾身の復帰Vは、新婚初Vでもある。
3月2日に籍を入れた。新妻とハイタッチ。石川は「嫁さん」と呼び、「フラットな感じの人で、いつもポジティブに支えてくれる。怪我をして、そのあとの結婚だったんですけど、怪我をしてなかったら、結婚してもこれだけ長く一緒にいる時間はなかった。人生という大きな視点で見ると、悪いことじゃなかった」。大切な人が一緒なら、苦難もバラ色の人生に変わる。

実家にも、昨年春から石川の知らない間に新しい“家族”が増えていて「柴犬のサンくん」。妹の葉子さんも成人して、それぞれ生活リズムは変わりつつあっても「ワンちゃんがいることで、家族が一緒にいるのが面白い」と半年のリハビリ生活は、愛犬にも癒やされた。

折しも、大会は2日目に発表されたワールドカップの代表リストに石川も名前を載せた。優勝を狙う松山英樹が「遼とじゃなきゃ嫌だ」と指名してくれた。11月の開催までに「間に合わせてくれ」と、言われてリハビリにもいっそう熱が入った。
ジュニア時代から絆を深めてきた。同い年の最強ペアにもまずはひとつ、結果で報いることが出来た。
2人で世界を目指す自信もついてきた。
このあと、国内は2試合に出たあと、今年2月から離れたままの米ツアーにも、10月の開幕から再び合流できる見込みだ。
それまでに、まだまだ好材料を持って帰るぞ。待ってろ、ヒデキ!

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