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東建ホームメイトカップ 2012

片山晋呉が首位浮上

5度の賞金王が久しぶりに渾身のガッツポーズを握った。もっともギャラリーが集まる上がり2ホールで、右こぶしを力強く振り上げた。17番パー5は、239ヤードの2打目を、7番ウッドで8メートルに乗せてこれをねじ込む。そして18番は、6メートルだ。右手前からのバーディパットが決まると納得顔に、心技体の充実がにじんだ。

午前中の雨が上がると、多度には決まって強い風が吹く。この3日間でもっとも難しいコンディションに、圧巻の65でいよいよ真打ちが単独トップに躍り出た。

上がり2ホールで、弟子を捕まえ突き放した。一時、首位を走っていた冨山聡は、このオフの宮崎合宿で、これまで培ってきた英知のすべてを注ぎ込んだ相手だ。一時は愛弟子と1位、2位を独占して、「このオフ、一番良い練習をしてきた2人」と、胸を張る。

初日から好位置をキープしている冨山の活躍にも、弟子のレベルアップを確信して胸が躍る。「ボードを見たらうれしいし、今年は最終日最終組でやりたいね、と話していたから」。残念ながら冨山が、最終ホールのバーディチャンスを外して「開幕1戦目にしてそれが実現しそう」と話していた片山の望みはひとまずお預けとなったが、「僕は、いま彼が抱えている悩みをすべて乗り越えてきたから。彼に何を聞かれても答えられる」と、心血を注ぎ込んだ弟子との優勝争いもまた、大きなモチベーションになっている。

では、ツアーで6人しかいない永久シード選手の悩みは何か、といえば、「僕には相談する相手がいない」ということ。5度の頂点を極めれば、「あとはもう、青木さんとか、ジャンボさんにしか聞けない。自分でもがいて見つけていくしかない」。そんな王者の孤独な葛藤も、心から楽しめる気持ちが片山に戻っている。

2009年にマスターズで日本人最高の4位に食い込んだがその直後に燃え尽き症候群に。「これから何を目指してやればいいのか」。あれほど貪欲に、上だけを見つめ続けた男が目標さえ失って、漂流した。それでも中嶋常幸に、「燃えて、灰になってしまったら、もう一度火をつけるのは簡単ではない。慌てないで、ゆっくりと」とのアドバイスに救われた。

ツアーで一番のアイディアマンは再び心に闘志を燃やすため、このオフもさまざまな取り組みを積んできた。「現状維持ではだめなんです。何か変えていかないと」。今は、もっぱら2008年にオーガスタを見据えて取り組んだというスイング改造の改訂版に熱中している。「改造は趣味。自分に刺激を与えてくれるもの」と、女子プロのスイングさえヒントにして、さらに一段、上がろうとしている。

先週のマスターズはもちろん、テレビで見た。一時は、もう「出たくない」とまで言った。「あれ以上やれないから」と、心を閉ざした。あの夢舞台に「もう一度、出たいと思うようになりました」と、いえるほどに心の回復を見せている。
「いまはワールドランキングも頭に入るようになりました。来年の4月には行きたいな、って」。
そのためにも2012年の開幕戦こそ、完全復活の序章としたい。

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