Tournament article

ゴルフ日本シリーズJTカップ 2011

石川遼が首位タイ浮上

1番で、ティショットをいきなり右の崖下に打ち込んだが、バーディチャンスはフェアウェイから打った松山さんよりも、近かった。ブラインドの2打目は、実際はピンまで135ヤード。しかし「フェアウェイから5ヤードくらい下がった場所は、左足上がりでアゲンストの風。木を越えていく選択は、9番アイアンで、155ヤードくらい打つ感じ」と、緻密な計算で3メートル半につければ、「狙いどおり。最高じゃないですか」と自画自賛のパーセーブで、スタートから同級生のスーパーアマを凌駕した。

同組で回った松山さんが、特に目を剥いたのは、ライバルの多彩な小技だった。「9番も、10番も。アプローチが上手かった」。

9番は、サブグリーンのほうから15ヤード先のピンに向かって「1ヤードの幅に落とす」と、これまた計算どおりの転がしで、1メートルにつけた。

10番は、サンドウェッジを握って「思いきりフェースを立てて打った」と1,5メートルに寄せて、ボギーにとどめた。
「今日はショートゲームに救われた1日。アプローチでこれだけずっと、良い状態をキープ出来ているのは、初めてです」と、本人も認めた。

最終18番パー3は、手前のラフにこぼれたアプローチに失敗して「ライが悪くて応用が利かなかった」と、再びラフに転がり落ちてきた3打目を、今度こそピンそばに寄せて、最後にもう一度、松山さんを感心させた。

幼いころは、飛距離の不足を小技で補うしかなく、実践の中で自然と鍛えられ、上達していった。しかし、体が成長して飛距離が出るようになり、グリーンに楽々届くようになると、逆に「ウィークポイントになった」。

アプローチをする機会が自然と減ったことで、やや頭打ちになっていた。「他の分野に比べて、伸びがなくなっていたんじゃないか」と、分析した。

2週前のプレジデンツカップで目に焼き付けて帰ってきた世界ランカーたちの技の数々。磨きにいっそう時間を割いて、「基本中の基本を練習した成果がいま出ているのだと思う」。
状況に応じて、高く上げたり、転がして寄せたり。「感覚に任せてアドレスを取れるようになった」というのも、確たる基本が出来てきたから。
「その中でこそ、応用が利いてくる」と、本人もここ数週間の急激な成長に手応えを感じている。

そして自信を持って寄せられるのも、「パットに自信があるから。1.5メートルくらいについてくれれば、と思ってアプローチに臨める。さらにアプローチがいいから、ショットも攻められて、という流れに乗っている」と、自信の小技で構築したこの日の67だった。

通算5アンダーは首位タイ浮上も、「今日の順位は気にしていない」と、浮かれない。「これからが長い戦いになる」と、今季初Vに向けて、気合を入れ直した。「大きなミスをしたとしても、焦る必要もないし、集中力を切らさずにやっていきたい」と力を込めた。

関連記事